1人1日20リットル
これはUNHCRが目指す難民1人対する最低限の水の供給量です。UNHCRの支援する難民キャンプのうち、この基準を満たしているのは43%。気候変動の影響により、さらに状況は厳しくなっています。
世界と比べてみると、EU諸国では1人当たり128リットル、米国では300リットルが毎日消費されています。難民キャンプでは、その10分の1以下の水を確保するのも難しいのが現状なのです。
「水は生きるために必要であることはもちろん、身体を清潔にするなど、さまざまな用途があります。難民の“尊厳”にもつながるのです」と、水と衛生分野の担当者は話します。UNHCRは安全な水へのアクセス確保に加え、トイレやシャワーの設置など、水関連の感染症を防ぐ取り組みを進めていますが、このような活動も、気候変動の深刻な影響を受けています。
アフリカの最も大きな湖の一つであるチャド湖は、50年前の1割程度にまで水量が減少。水不足から約5000万人が故郷を離れることを余儀なくされ、2004年以降はボコ・ハラムの活動による情勢不安により250万人以上が移動を強いられています。
2004年以降、水不足に悩むチャド東部には、スーダンのダルフール地域から数千万人規模の人々が安全を求めて逃れてきており、その多くは一つの小さな村に集中しています。UNHCRは井戸を掘るなど持続的な解決策に取り組んでいますが、さらなる対応が求められています。
また、「気候変動」と聞くと、水が足りない=干ばつをイメージされがちですが、その逆、大雨も人間にとって大きな脅威です。
その一つがバングラデシュ。モンスーンによる雨は一般的な気象現象という認識ながらも、気候変動の影響により、その勢いが年々増しています。
南東部コックスバザールに避難している90万人のロヒンギャ難民のうち、地滑りや洪水による危険に直面しているのは20万人以上。下痢などの感染症も課題の一つですが、UNHCRがパートナー団体と連携して初期対応に注力したことから、それほど拡大していません。
UNHCRは水不足への対応策として、キャンプ内に掘った300の井戸のうち、約15%の井戸にソーラーパネルを採用するなどの工夫をしています。
これからも現地のニーズに応じた効果的な方法を模索し、UNHCRは難民ひとり一人の水の安全を守っていきます。
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