ドイツ西部の街、人口1万7,000人のアルテナは、2013年から450人の庇護申請者を受け入れてきました。この動きを主導してきたのが、この街のアンドレアス・ホルステイン市長 。難民との共生を推進する取り組みが評価され、2018年のナンセン難民賞にヨーロッパ代表として最終候補にもノミネートされました。
「壁にぶち当たることもありますが、この街で進めてきた政策は意義あるものだと信じています。世界の難民が直面する問題すべてが解決できなくても、自分たちができる最大限のことをすれば、少しでも力になれることがあるはずだからです」
アルテナは近年、工場の閉鎖などが続いたことから、人口流出に悩まされてきました。しかし、市長のイニシアチブにより状況は一変しました。ホルステイン市長は、難民を受け入れることで経済が活性化し、難民にとっても地域の人たちにとっても、長期的に良い影響が生み出せると考えています。
難民と共生するまちづくりを目指し、市を挙げて、さまざまな取り組みが進められています。難民は隔離されたキャンプではなく街中のアパートで暮らし、近所の人と交流できるようにボランティアがサポート。難民が自分のスキルを生かして就労の機会が得られるよう、マッチングポータルサイトも開設されました。
シリアのアレッポから避難してきた2児の母ザリファ(25)は、年配の地域住民からドイツ語を習い、その間、他のボランティアが隣の部屋で子どもたちを見てくれています。夫でエンジニアの シャヒン(33)も、行政サービスを通して仕事を見つけることができました。
2015年にダマスカスから逃れてきたムハンナド(23)は、ドイツ語をすぐに習得し、今は電気工の職業訓練を受けています。彼のメンターを務めているのが、この街で生まれ育ったロジャー(68)。難民の若者20人の就労、職業訓練の支援をボランティアで続けており、「ドイツでいかに生きがいをもって暮らしていくかを教えてくれた」と、ムハンナドをはじめ、難民たちにとって頼りがいのある存在となっています。
難民と地域の人々の交流が、日常の風景として見られるようになったアルテナ。どんなに小さなことでも、必ず人に役に立てる方法がある―。ホルステイン市長の想いが、街全体に広がっています。
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