「この用水路ができるまでは、辺り一面が草むらでした」
そう話すのは、エチオピア東部ソマリ州の難民キャンプの受け入れコミュニティで灌漑事業を担当するイブラヒム。「農業もできず、食べるものも十分にない状態。売るなんてとんでもありませんでした」。都市部から離れた奥地にあり、度重なる干ばつに苦しめられていました。
この状況を変えるきっかけをつくったのが、UNHCR、イケア・ファンデーション、エチオピア当局による5年がかりのパートナーシップ。ソマリ州で暮らす難民、受け入れコミュニティの人々の生活を改善するため、2万メートルの灌漑用水路が整備されました。
完成から2年、乾いた土地が肥よくな農地に一変。川から流れてきた水が用水路を通り、すべての農地に水が行き渡るようになりました。
「難民たちは土地を持つことで、自立した生活を送ることができるようになりました。難民であれ、エチオピア人であれ、私たちは共に歩むきょうだいです」。イブラヒムはそう話します。
今では13種類もの作物が作られ、国内各地の市場でも売られるようになりました。この土地で暮らす人々は互いに理解し合って助け合い、地域の発展を願って、日々を懸命に生きています。
ソマリアから逃れてきた難民家族は、土地を得て、農業ができるようになったことで命を救われてきました。「この農地は私に自由を与えてくれました。以前は支援に依存した生活だったのが、今は子どもたちのために必要なものを買えるようになりました」と母親は話します。
自分の子どもから教育の機会を奪いたくない、と思っている親はたくさんいます。UNHCRとイケア・ファンデーションは、教育分野での取り組みにも力を入れています。
この支援を受けて大学に進学できたという、ソマリア難民のイクラは現在20歳。「大学ではマネジメントを学んで、自分の国で続く問題解決に貢献したい。そして将来大統領になれたら、社会のためにもっと学校をつくりたいんです」と大きな夢を語ってくれました。
こうした一連の取り組みは、包括的難民支援枠組み(CRRF:Comprehensive Refugee Response Framework)*の一環で行われています。
* 2016年9月に国連総会で採択された「ニューヨーク宣言」の附属書Ⅰに記載された、移民と難民の保護を促進するための国際的な枠組み。
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