ベルギー北部の街、アントワープ郊外。ヤラ (29)とシリア難民の女性たちは、レストランの開店初日に向けて準備しています。スタッフに説明をしたり、ホウレンソウと松の実が入ったパイ“ファティール”を焼いたり・・・、忙しいながらも、その姿は生き生きとしています。
シリアで生まれ、クウェートで育ったヤラ。ベルギーに逃れて難民認定を受けたのが2014年、ずっと、自身がどうしたら難民たちの助けになれるかを考えていました。そこでカギになると考えたのが、“働くこと”です。「仕事を得ることで、難民たちは社会に役に立つことができると実感する。生きる目的ができるのです」。
中でも、避難先で社会に溶け込み、仕事を探すことが難しい主婦の難民女性たちをターゲットに考え、思いついたのが、彼女たちの料理の腕を生かしたケータリングビジネスでした。
そうして生まれたのが、ヤラのビジネス「From Syria with Love(シリアから愛を込めて)」。路上の屋台は話題を呼び、スタートから1年がたち、800人のお客さんに料理をふるまうことのできる本格的なレストランに成長しました。
ポルトガルの首都リスボンでも、ケータリングサービスが難民の雇用を生み出し、受け入れコミュニティとの統合を促しています。
「女性たちには素晴らしい調理経験やスキルがあり、もっと評価されるべきです」。立ち上げ人の一人、シリア人学生のアラー(25)は、料理を使ったビジネスは難民女性が強みを生かし、経済活動に参加できる絶好の機会と考えています。
また月1回、店内のスペースでシリア難民と地域の人々が交流する場をつくっています。「女性は働くべきか」「異教徒間の結婚は許されるか」など率直な質問が飛び交い、互いを知る良い機会になっていると言います。
2018年4月、UNHCRとOECD(経済協力開発機構)は、難民の雇用機会を増やすためのアクションプランを発表。難民が労働市場に統合するための機会や方法だけでなく、難民が仕事を探すサポートするために必要なさまざまな活動を定めています。
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