第81号(XLVIII) -1997- 国際的保護に関する一般的結論 *1

執行委員会は、

  1. 難民の危機的状況が複雑化しているにもかかわらず、世界の多くの地域で各国が難民の個別的基礎においても集団的流入の状況においても、難民に庇護を与え続けていることを歓迎し、
  2. 昨年中に生じた難民、帰還民および避難民への深刻かつ度重なる残忍な人権侵害を強く咎め、また中部アフリカにおける難民、庇護希望者および避難民の状況に対して引き続き特別な憂慮の念を抱き、
  3. 難民の国際的保護およびこの分野に関するUNHCRの、託されている役割の基本的重要性を繰り返し表明し、また、高等弁務官が各国および関連機関と協力して成し遂げた難民保護の促進および永続的解決の助長についての貢献を賞賛の意をもって認め、さらに高等弁務官が他の人道的ないし開発機関および各国と協力して、難民の危機的状況の解決に貢献し、かつその危機的状況の根本的原因に取り組むために払った尽力を認知し、
  4. 難民の保護は第一義的に各国の責任であり、これに関してUNHCRの責務とされる役割が各国(受入れ国および出身国を含む。)からの、あるいは他の国際機関からの、あるいはまた国際社会全体からの効果的な行動、政治的意志および十分な協力に代替しうるものではないことを強調し、
  5. 各国に対し、国内立法によって、かつ難民保護に直接関わる国際人権法文書および国際人道法文書に基づく各国の義務に従って、更にはUNHCRが国際的保護機能を遂行しおよび難民保護のための国際条約の適用を監視するというその役割を遂行することに対する十分な協力を通じて、難民を効果的に保護することを確実にするのに必要なすべての措置を執るよう要請し、
  6. 各国に対し、とりわけ難民の保護が脅かされている状況(とりわけ複雑な緊急事態を含む。)において国際的保護の諸原則の履行を強化することについて、高等弁務官を援助するために執ることができる措置(国連の有権的機関およびその他の関連国際組織を通じて行われる措置を含む。)を検討するよう要請し、
  7. 絶対に必要な保護に関する政策および実務慣行についてのガイダンスの提供やコンセンサスの創出におけるこの委員会の重要性を強調し、またこのことに関連して、本執行委員会の結論に対して十分な配慮が払われるべき相応な必要があることをを強調し、
  8. 結論第80号(XLVIII)を再確認し、また難民保護の包括的な施策には、特に、あらゆる人権の尊重、ノン・ルフールマン原則、難民の地位を認定するための公正でかつ実効的な手続および保護上の必要措置にすべての庇護希望者が、1951年条約および1967年の議定書に従ってアクセスすることができること、これらの手続の適用なしに国境において入国拒否を受けないこと、庇護、必要とされるあらゆる物資の提供、ならびに人間としての尊厳と価値を認める恒久的な解決方法の特定が含まれることを留意し、
  9. ノン・ルフールマンの原則の基本的重要性を認識する。同原則は、難民としての地位が正式に与えられているか否かに関わらず、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であることもしくは政治的意見を理由にその人の生命および自由が脅かされる恐れがある領域の境界へいかなる方法によっても当該者を追放しもしくは送還することを禁じ、または1984年の拷問等禁止条約に定める拷問を受ける恐れがあると信ずるに足る実質的な理由がある人をそのような危険のある領域の境界線へいかなる方法であろうと追放もしくは送還することを禁ずるものである。
  10. また、庇護国(とりわけ発展途上国、通過途上にある国、その地理上の位置のために大量の難民・庇護希望者を受け入れることになった国で資源に限りのあるものを含む。)が、多大なる負担を担うことを認識し、このことに関して、国際的な連帯および負担配分の原則を支持することへの本執行委員会の関わりを繰り返し表明し、各国政府、UNHCRおよび国際社会に対して、恒久的解決方法が見つかるまでの間難民が必要とする援助に対応し続けるよう要請し、
  11. 各国およびUNHCRに対し、難民保護および恒久的な解決方法について地域的イニシアチブが適切である場合それを促進し続けるよう、また創設される地域的基準が普遍的に認められる基準に完全に一致し、かつ個々の地域的環境および保護上の必要事項に対応することになるように確保するよう奨励し、
  12. エストニア、ラトビア、リトアニアが1951年の条約および1967年の議定書に加入し、これらの文書の片方もしくは双方の法規への加盟が135ヶ国に達したことを歓迎し、
  13. 1951年の条約および1967年の議定書の締結国ではない多数の諸国が、庇護に関して寛大な対応策を保持し続けていることに対し賞賛の意をもって留意する。それにも関わらず、50を超える国々が未だにこれらの文書に加入していないことを顧みて、高等弁務官に対して更なる加入を促進するよう奨励し、また、未だにこれらの文書に加入していない全ての諸国に対して、難民保護のための地域的文書と同様にこれらの文書に加入し、完全に履行することを強く要請する。これらの文書が適用されることになれば、そのことによって国際的保護の枠組みは強化されることになる。
  14. また,1951年の条約、1967年の議定書の双方もしくは片方の締約国であってこれらへの加入に際してこれらの文書のいずれかの条項に関して留保を付した国々に対し、その留保を取り下げる方向で見直すよう要請し、
  15. 1954年の無国籍者の地位に関する条約および1961年の無国籍者の減少に関する条約へ加入する国が増加していることを歓迎し、またUNHCRに対して、関連する機関と協力してその努力を引き続き行なうよう、技術的および助言的支援ならびに研修を全世界に提供するとともに、これら二つの条約への加入を促進してゆくよう、無国籍の問題および国籍問題に関する情報を広く伝えるよう、またこの問題の分野に関係のある諸国および他の国際機関との協力を更に増進するよう奨励し、
  16. 保護を必要とするすべての人に対する国際的保護を保障する方法に関して行われている討議に留意し、UNHCRに対してこの問題分野に関する更なる進展を目的として非公式の専門家会議(ガイダンスとなる原則の創設を探求することを含む。)を催すことを奨励し、
  17. 自主帰還、現地での統合、および再定住が難民問題の伝統的な恒久的解決方法であることを留意し、難民の自主帰還が、実行可能であるならば、最も好ましい解決方法であることを確認し、また出身国、庇護国、UNHCRおよび国際社会に対して難民が安全にかつ尊厳をもってその郷里に帰る権利を自由に行使できるよう必要なすべての措置を執るよう要請し、
  18. 保護及び負担配分の方策として、また条件によっては恒久的な解決方法として再定住の継続的重要性を再確認し、これらを実行できる政府に対しては難民の再定住のための努力を続けることを奨励し、これらを未だ実行していない政府に対しては難民に対する再定住の機会の提供に参加することを奨励し、更にUNHCRに対しては54回期の執行委員会に再定住に関する活動を報告するよう要請し、
  19. 国籍国へ帰還する全ての人の権利および自国民の自国帰還と再統合を促進することに関する国家の責任を再確認し、各国に対し、人が国際的保護を必要とせずに安全にかつ尊厳を保ちつつ帰還しうるよう促進するための計画を国際的協力の枠組みの中で検討するよう勧告し、UNHCRに対しては、この問題に関連する他の国際機関と協力して、個人の帰還への進行が国際的保護を必要とせずに公正かつ効果的手続を通して決定されて促進されうるという方法を引き続き探求し、かつその方法を常任委員会に報告するよう奨励し、
  20. 結論第39号 (XXXVI)、第54号(XXXIX)、第60号(XL)、第64号(XLI)、第73号(XLIV)を再確認し、各国およびUNHCR、更には適切である場合には他の人道機関に対し、これらの結論を履行するために必要なすべての措置を執ることを強く要求する。その措置には、難民女性については、1951年の国際条約および1967年の議定書に掲げられている理由によって迫害を受けるという十分に理由のある恐怖を有することに限らずに、性的暴力やその他の性差に関連する迫害を受ける恐れのあるという十分に理由のある恐怖を有することも含めてその難民の地位の主張の根拠として認めること、また計画の立案およびその実行のすべての面において難民女性に配慮して活動を統合すること、並びに成人女性や未成人女性に対する暴力を排除するために行動することも含まれる。
  21. また、難民法および保護原則の促進に関してUNHCRの普及活動および研修活動に満足の意をもって留意し、また高等弁務官に対し、各国の積極的な支援を得て、かつ非政府組織、研究機関およびその他の関連機関との更なる協力を通じて、UNHCRによる難民法促進の作業を強化し続けることを要請する。

*1国連総会文書No.12A(A/52/12/Add.1)に含まれている。