7月29日、国連大学でUNHCR特使でもあるアンジェリーナ・ジョリー監督の映画「最愛の大地」の試写会が行われた。英国のヘイグ外務大臣、岸田外務大臣からのメッセージが紹介されたあと、第8代国連難民高等弁務官の緒方貞子氏が登壇した。ジョリー氏が数多くの難民キャンプに積極的に足を運び、難民の直面している現状を訴えて来た活動を称えるとともに、映画の舞台となっているボスニアの現状、今後の課題について語った。
続いて映画「最愛の大地」の監督であり、英国のヘイグ外相とともに「紛争下の性的暴力抑止」にむけて行っているアンジェリーナ・ジョリー氏がスピーチを行った。
「ボスニアでの戦争が始まったのは、私が17歳のときです。包囲攻撃や虐殺で、何十万もの人たちが亡くなりました。それもヨーロッパの中心で。性暴力が、民族浄化の手段として大規模に用いられました。そして、NATOの介入により殺戮が終結するまでに、3年半という長い時間が必要でした。
私がこの映画を作ったのは、ボスニアでの戦争について、私が当時理解していなかったことが沢山あったからです。それは、私たちの多くが現在なお苦しんでいる問題でもあります。友人や隣人として平和に暮らしてきた人たちが、一体どうして互いを攻撃するようになるのか。戦争がいかに人間を変え、言葉に出来ないほどの残虐な行為をさせるようになるのか。そして、すべてを失うとはどういうことなのか。ありとあらゆるトラウマや暴力を経験し、そのうえ国際社会に見捨てられる。助けが必要なときに、世界から背中を向けられたと感じる。それはいったいどういうことなのか。私はこうした問題を、映画という方法を通じてみきわめようと思いました。
でも、それはアートであり、ドキュメンタリーではありません。ここでの目的は、非難や中傷ではなく、理解しようとすることです。人間のありように対する考察です。アートですから、人によって見方は様々でしょう。どんな判断を下すかは、ご覧になる方一人ひとりの自由です。でも、判断の中身がどうであれ、皆さんがこうした問題についてもっともっと考えるようになってほしいーそれが私の願いです。」
試写会のあとは、難民支援活動を行う学生団体「J-FUN ユース」のメンバーである鯉江昂さんが登壇。紛争下、立場の弱い女性が精神的苦痛を受けている事実を、知り、考えることの大切さを語り試写会は終了した。