建築家の坂茂さんがこのほど、UNHCRなどが開設したケニアのカロベイエイ難民居住区で最大2万戸の住居をデザインする契約を国連ハビタット(国際連合人間居住計画)と結びました。南スーダンなどから大勢の難民が押し寄せ、シェルターの設置が大きな課題となっていることを知り、ご自身のスキルや経験を活かして貢献することを決めたといいます。
坂さんは先ごろカロベイエイ難民居住区を訪れ、難民や受け入れコミュニティの住民と面会し、現在の住居を視察したり、住居の査定やデザインのニーズの把握を行いました。
「組み立てる際に技術的な監督がほぼ必要なく、地域にあるもので環境にも配慮した素材を使った住居をデザインすることが鍵でしょう。また、居住者が簡単にメンテナンスできることも重要です」と坂さんは言います。そのため、その土地での住居の作り方を学び、これまで培ってきた被災地のシェルターに関する知識と経験を伝えていきたいと考えています。
カロベイエイ難民居住区には、主に南スーダンとソマリアから避難してきた難民約3万7000人が生活しています。住居は4万5000人分しかないものの、難民の流入が続いているため、住居のニーズは今後増え続ける見通しです。
UNHCRケニア事務所のラウフ・マゾゥ所長は、カロベイエイでのシェルター状況の改善に携わりたいという坂さんの意思を歓迎しています。「坂さんのご好意に感謝いたします。長く使えるしっかりとしたシェルターが提供できることは、カロベイエイに避難する大勢の難民のニーズに応えることができます。このようなパートナーシップは、難民を後押しし、支援への依存を軽減する上でも有効でしょう。そして、地域の社会経済的な状況の改善も見込め、難民のみならず、受け入れコミュニティにも恩恵をもたらすと考えられます」
ただ、カロベイエイで住居を建設する上では様々な課題があります。水供給の少なさ、森林の伐採、猛烈な暑さ、さらに雨期には大雨による洪水の発生など厳しい環境に囲まれています。さらに、カロベイエイは僻地にあり、商業ベースでのフライトはなく、首都ナイロビからは陸路で最大3日かかるため、資材の運搬が困難となる可能性があります。
坂さんは、1990年代に約200万人のルワンダ難民向けの紙管を使ったシェルターのデザインに携わったほか、イタリアやトルコ、ネパールなどで被災地でのシェルタープロジェクトにも携わった経験があります。
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