UNHCRは今後10年間で無国籍をなくすためのキャンペーン “I Belong”を行っています。無国籍者は国籍を持たず、そのために人権を基盤とした保護を受けられない人々のことを指します。
無国籍者は世界中に1000万人以上いると見られており、10分に1人無国籍の子どもが生まれています。無国籍者は本来国家が国民に付与する権利やサービスへのアクセスを持たない場合が多く、様々な問題に直面します。
無国籍状態に陥る理由の多くは、民族、宗教、ジェンダーに基づく差別です。ここ3年間で無国籍に関する2つの国際条約(1954年「無国籍者の地位に関する 条約」と 1961年「無国籍の削減に関する条約」)への加入国が増えた一方で、紛争を逃れた難民が避難中に出産し、出生証明書を得られずに子どもが無国籍者になる ケースが増えています。
UNHCR駐日事務所は上智大学と共催で6月8日から20日、写真家グレッグ・コンスタンティン氏による写真展を開催致します。この写真展を通し、1人でも多くの方に無国籍について知り、考えて頂きたいと願っています。
【グレッグ・コンスタンティン写真展】
NOWHERE PEOPLE: THE WORLD’S STATELESS
開催期間:2015年6月8日(月)-6月20日(土)09:30-17:00
会場:上智大学四谷キャンパス 2号館1階エントランスロビー(駐車場なし)
費用:無料
初日6月8日(月)12:45よりオープニングセレモニーを予定しております。
登壇者:早下上智隆士大学長、マイケル・リンデンバウアーUNHCR駐日事務所代表 他
無国籍とは?
無国籍とは、国籍を持たないということです。どの国からも国民として認められず国家の後ろ盾がないことから、生まれながらにして守られているはずの人権や自 由、生活が保障されません。例えば教育を受ける、結婚する、就職する、医療サービスを受ける、自由に移動ができるといった、当たり前の日常生活が非常に難 しく不安定なものになるのです。
また無国籍者の多くは、必ずしも国境を越えることなく、 出生国で暮らし続けていることから、社会の中でいわゆる「見えない人々」となり、問題が表面化されにくいのです。無国籍者の特定は難しく正確な数は 把握しきれていませんが、世界中で少なくとも1000万人は存在するといわれています。無国籍となるには様々な背景があります。国家の崩壊といった自分の意思を超えた事情、国家間の法律の抵触により、意図せずに国籍を失ったり取得できないこともあり、国際結婚の夫婦の元に生まれた子どもが無国籍になること もあります。時には恣意的に国籍を剥奪されることもあります。また一部の国では、女性が国籍を自分の子どもに受け継がせることができず、その子の父親の国籍を法令上取得することができない場合などに、子どもが無国籍になる危険性が高まります。
無国籍に関する国際条約は、無国籍者に最低限の法的地位を保障する1954年無国の籍者の地位に関する条約、無国籍者の発生の防止と削減を目的とした1961年無国籍削減に関する条約がありますが、日本はいずれの無国籍条約への加入も果たしていません。
© UNHCR/G.Constantine
日本における無国籍
日 本も無国籍には無縁ではありません。日本国内において統計上635人の無国籍者がいるとされています。その背景は、日本での在留資格がない両親が強制送還 を恐れ、子どもの出生を届け出なかったために国籍を取得できない場合や、日本で生活する難民の二世として生まれ、国籍のない状態に置かれている場合など 様々です。無国籍者の存在自体が知られていないことから、日本国内での状況の把握、及び無国籍者であるか否かを認定する制度の導入が望まれています。
写真家略歴
グ レッグ・コンスタンティン氏は、東南アジアを拠点とする写真家。世界の無国籍問題の理解を深めるための活動に積極的に取り組んでいる。2008年からは UNHCRと提携し、世界各国で本写真展を開催している。イヤーインターナショナル賞、NPPAベストフォトジャーナリズム賞、アムネスティーインターナ ショナル・ヒューマンライツプレス賞、アジア出版協会賞、ハリーチェイピン賞等数多くの賞を受賞し、高い評価を得ている。
© UNHCR/G.Constantine