2014年4月4日 中央アフリカ共和国、バンギ マリーエレンは中央アフリカの暴力と恐怖に巻き込まれた […]
2014年4月4日 中央アフリカ共和国、バンギ
マリーエレンは中央アフリカの暴力と恐怖に巻き込まれたが、報復よりも正義を求めている。
昨年12月から戦闘が激化する中央アフリカでは新たに宗教対立が進んでおり、国の社会組織を崩壊させている。
アントニオ・グテーレス高等弁務官は先月の国連安全保障理事会で、中央アフリカで行われている残虐行為は自身が8年間高等弁務官を務めてきたなかで最も過酷な事態だと話した。
マリーエレンは、キリスト教徒とイスラム教徒が平和に暮らすボサンゴアの病院で看護師として働いていた。そこから10キロほど離れた村で神父である父と母と9人の子どもたちと暮らしていた。2013年3月にセレカ(イスラム系の反政府組織)が首都バンギを制圧してから村人は不安を抱えていたが、とうとう同じ年の9月に村が襲撃された。
一時は村を避難したものの、日曜のミサを行う為に村に戻った父親はセレカの襲撃に遭い殺されてしまった。セレカのメンバーが去った次の日、家族はバラバラになった父親の遺体を回収し、教会に埋葬した。
「ボサンベレまでバスで行って、そこからボアリまで歩き、最後はタクシーで首都のバンギに向かった。10日間かけ辿り着いたバンギ国際空港の施設でやっと安心することができた。」と話したマリーエレンは、現在UNHCRのパートナー団体に所属し、避難民コミュニティのなかで性的被害にあった女性や孤児を保護団体にとりつぐ役目を担っている。
こうした活動のほかにも自分なりに平和を促す努力をしている。「これは報復という名の暴力の連鎖です。残念ながら人びとは自らの手で制裁を加えようとしている。私は兄弟やコミュニティのメンバーに耐えるよう訴えている。暴力によって正義は得られないのだから。」
セレカと反バラカ(キリスト教系民兵組織)の衝突で昨年12月から2000人以上が犠牲になった。不安定な行政に加え、刑罰法がほぼ存在しないため、状況はますます悪化した。警察が犯罪者を逮捕しても起訴する体制が整っておらず、裁判所と刑務所も機能していない状態だ。
司法制度によって殺人などの犯罪が追及されないため、自らの手で制裁を下す人が増えているのが現実だ。
3月末に起こったコミュニティ内の暴動を受け、新たに多くの人びとが避難民となった。中央アフリカにおける国内避難民の数は63万7000人にのぼり、そのうち20万7000人が首都バンギに避難している。およそ31万7000人が周辺国へ逃れた。
マリーエレンは正義なくして和解はありえないという。「ボサンゴアにはもう戻れない。あまりにも悲惨な出来事があった。新しい未来を切り開かないといけない。」と訴えた。
※本人保護のため、文中の名前は変更しています