6月10から13日までアンジェリーナ・ジョリーUNHCR特使とヘイグ英国外務大臣との共催による「紛争下における性的暴力の終焉に向けたグローバル・サミット」がロンドンで開催された。
サミットに出席したアントニオ・グテーレス高等弁務官は、紛争下における性的暴力をなくすためには加害者が処罰されない社会の変革と、被害者への支援の必要性を訴えた。またグテーレス高等弁務官は昨年11月に開始した紛争下における性的暴力防止を訴える一連の活動を評価した。さらに米国で行われているSafe from the Startという活動を好例としてあげた。Safe from the Startとは「性と性差に基づく暴力(SGBV)」をモニターし、被害者を支援する取り組みである。その一方でグテーレス高等弁務官は解決すべき「3つの克服すべき課題(3 key gaps)」に言及した。
「各国政府、軍隊、司法組織、国際機関などにおいて男性優位の文化が支配している。女性の受ける苦しみの深さや、この問題の深刻さを真に理解する上でこれは障害であり、克服すべき課題の1つである。またこの現象は途上国だけで見られる問題ではなく、先進国にも当てはまる深刻な問題である。」
2つ目の課題は紛争地域において、性暴力の加害者が処罰されないことである。加害者が逮捕、起訴されたり、処罰を受けるのはまれである。3つ目の課題は、被害者とその家族に対する適したサポートがなされていないことである。
「被害者への心理的、且つ社会的サポートを行う基盤がないのは深刻な問題である。支援を可能にするためには多額の投資が必要だ。」とグテーレス高等弁務官は訴えた。
サミット3日目には123ヶ国の代表が集結し、専門家からの解決策の提案、各国の解決策と課題、紛争下の性的暴力防止に対する取り組みなどについて意見交換がされた。
アンジェリーナ・ジョリーUNHCR特使は「これまで顧みられなかった人々のために私達はここに集まっています。顧みられなかった人々とは、性的暴力によって辱しめを受け、社会から見棄てられた人々やレイプされた子どもたちのことです。国際社会に被害者の体験を伝え、処罰を与えない社会など到底受け入れられないことを訴え、被害者へ寄り添う気持ちがこれまで欠落していたことを伝えるために今ここにいるのです。」とサミット出席者に語りかけた。
さらにジョリー特使は各国政府高官に、非難するだけでなく行動に移すよう訴えた。具体的には法改正や、紛争下における性的暴力に関する研修を軍隊や警察に対して行う、性的暴力の被害者の支援を行っている国際機関やNGOへの資金提供などを提案した。
「性と性差に基づく暴力(SGBV)」の防止と被害者の支援はUNHCRの保護活動の要である。しかし人道的危機下ではそのような暴力は報告されないことも多く、解決の難しい問題の1つである。多くの関係者、関係団体と調整をはかり、協働するという前提の上ではじめて支援が可能となる。サミットに出席したフォルカー・ターク国際保護局局長は、UNHCRはSafe from the Start活動に伴い、専門家の派遣を実施するなど、人道危機において保護の分野で貢献することを表明した。
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