2013年1月29日、マリ、バマコ発
この少年は1月14日、武装組織からの攻撃を逃れ首都バマコに避難してきた。この日を境に、彼はマリに23万人いる国内避難民の中の一人となってしまった。
UNHCRは目まぐるしく変わるマリの状況を受け、マリ北部に避難していた人々が自主的に帰還できる状況までに治安が回復すれば、帰還支援する準備を始めている。
「安全が確認されたら、新たにガオや他の北部の市での支援を始めたいと思っている。」イスラム武装集団によって人道支援が中断していることに触れつつエイドリアン・エドワーズUNHCR報道官はこのように支援を表明した。
首都バマコで避難生活を送る人々に話を聞いたところ、多くの市民がガオやキダルといった武装組織がまだ占拠している可能性のある場所であっても、「家があるから帰りたい」と望んでいることがわかった。
避難していた人々による自主的な帰還はすでに始められている。マリ中央に位置するコンナという町では、仏軍が軍事介入するきっかけとなった武装組織による町の占拠によって、全住民1万人のうち半数以上が周辺の村などに避難していた。最近の国連による治安評価の視察では、すでに人々が戻り始めたことが確認されている。
国内避難民の帰還への思いは募る一方で、マリ北部の情勢は厳しい。マリ北部から避難してきたばかりの人々は、食糧、水、燃料が不足している現状を訴えている。さらにマリ北部では電気、交通機関、情報伝達のツール、医療サービス、教育などに支障が出ており、混乱状態であることがわかった。
アルジェリアに近いキダルとテサリットでは、紛争によって国境が閉鎖され、これまで輸入されていた食糧や他の生活に必要な最低限の物資が届かなくなっている。
キダルへ逃れた何百人もの人が北へ北へと移動し、アルジェリアとの国境ぎりぎりまで逃れている。なかには封鎖されている国境を越えてアルジェリアへと逃れる人も出ている。
「アルジェリアからわずか20キロのインハリッドという村では何百人ものマリ市民が避難生活を送ってると聞きました。」キダルやテサリットから逃れた避難民の代表としてザイナブさんが語った。「それ以外の人々はアルジェリアへと避難しました。そのほとんどが女性と子どもで、家を借りられるような場所をめざして行ったんです。」
ザイナブさんはイスラム武装組織がテサリットに到達した昨年4月から避難生活を強いられている。彼女は何度かテサリットに戻っているが、戻る時は必ずベールをかぶり、常に電話で家族や友人と連絡をとるようにしているという。「人々は空爆と、報復を大変恐れています。マリ軍とイスラム武装組織両方から報復される可能性があるのです。」
紛争はアルジェリアからキダル、テサルトへと送られていた物流にも影響を与えており、結果肉や牛乳といった生活必需品が値上がりしている。ザイナブさんが言うには武装組織は兵士にするため子どもたちを集めているという。「12歳くらいの子どもたちが武装集団と一緒にいるところを見た。中には8歳くらいの小さな子どももいました。」このような子どもたちは国境付近の検問所で警備をさせられるという。またザイナブさんによると、テサルトではほとんどの教師が避難しているために子どもが授業を受けられない状況になっている。
UNHCRのエドワーズ報道官は「UNHCRはコミュニティのリーダーやマリ当局に対し、様々な民族が平和のために和解することを第一の課題とすることを訴えている」と述べた。
UNHCRはマットや毛布、調理器具といった生活必需品をマリで避難する9000の家族に届けるための緊急調達を始めた。
一年前に始まった紛争によって、これまでに38万人がマリ北部へと避難した。このうち23万人がマリ国内にとどまって避難生活を続けており、15万人以上は難民としてモーリタニア、ニジェール、ブルキナファソ、アルジェリアへと逃れている。
詳しくはこちら(英語)