イタリア、ローマ
UNHCRは10月2日、欧州を目指し地中海を航海中に死亡した人の数が今年7月から9月にかけて、憂慮すべき速度で増えていると発表した。
昨年7月1日から9月30日の間に欧州に渡った合計7万5000人のうち、800人が死亡したのに対し、同じ期間で今年は9万人のうち、少なくとも2200人が命を失った。また地中海を航海中に命を失う確率は今年の前半は1.06%だったのに対し、7月から9月の間では倍以上の2.4%となった。
今年に入りすでに16万5000人が地中海を渡っているが、この数字は昨年2013年全体の6万人をはるかに上回っており、人々が直面する過酷な現状を映し出している。
UNHCRはこの非常事態を受け、欧州各国は地中海の救助活動を強化し、危険の伴う海路ではなく、安全に入国できる経路確保の為の法整備を急ぐよう繰り返し呼びかけた。アントニオ・グテーレス高等弁務官は、「我々は昨年10月にランペドゥーサ島で起きた惨劇から何も学べていない。より多くの難民が安全を求めて航海に乗り出し、溺死している。EU各国は協力して、主にイタリア海軍や商業船によって行われてきた海上救助活動の強化に取り組まなくてはならない」と語った。
なぜ今年に入り地中海を渡る人の数が増加し航海中の事故が増えたのか、はっきりとした原因はわかっていないが、リビアの情勢などいくつかの要素が関わっていると見られている。リビアでは、治安の悪化がサブサハラアフリカ地域や中東出身の庇護申請者や移民など、不安定な立場にいる人々に大きな打撃を与え、危険を冒して欧州を目指す原因となっている。
こうした人々の多くにとって、地中海を渡ることが唯一の選択肢になっている。UNHCRは海路以外の安全で合法な経路を緊急に確保するよう呼びかけた。またEU各国と北アフリカ各国は合同で、安全面だけでなく人権と難民の置かれた立場に配慮した国境管理を行うと同時に、第三国定住の受入れ数を増やし、 紛争や迫害を逃れる人を対象に人道的配慮に基づいた滞在許可を出すなどの対策をとる必要がある。
UNHCRは、欧州の各国政府が民間企業に支援を要請し、難民に就労ビザや学生ビザを発行するのに加え、離ればなれになった難民の家族が再会できるよう取り計らうよう呼びかけた。グテーレス高等弁務官は「彼らのように助けを必要としている人々が安全に避難できる方法を見つけなければならない。我々が想像もできないような危険と恐怖にさらされて避難してくる」と語った。
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UNHCRの報告書「近くて遠い安全(so far, yet so far from safety)」はこちら(英語)