ベルギー・ブリュッセル(5月17日)発、
UNHCRは、欧州連合(EU)共通の第三国定住プログラムを導入を訴えてきたが、今年5月、難民の受け入れに前向きな国会議員の協力のもと、受け入れ増大ヘ向けて本格的に動き出した。UNHCRを支持する声は、12日のヨーロッパ議会上で「難民と第三国定住を啓発する日」として挙げられた。議場では、ヨーロッパ議会議員の多くは、難民問題を単に数として捉えるのではなく、実際に支援を必要としている難民と対面したことに影響を受けたことが分かった。
UNHCRのヴァンサン・コシェテルは第三国定住について「難民が今いる場所でUNHCRが守りきれない人に手を差しのべることだ」と述べた。
2009年には128,000人分の第三国定住への要請が受入れ国に提出された。UNHCRの支援のもと、26か国において約84, 000人が第三国定住を果たしたが、そのうち、62,000人もの難民がアメリカで新しいスタートをきったのに対し、ヨーロッパでは6,800人であった。
UNHCRは、難民問題が長期化する国から、今後数年間で750,000人近くの人が第三国定住する必要があると推測している。この数字は世界における難民の数の約6%である。
会議の出席者の中には、難民の訴えを直接聞いたことや、難民のおかれた状況を確認するために受入国を訪問したことが第三国定住プログラムを支持する大きなきっかけとなったと述べるものもいた。
ポルトガル出身の無所属議員ルイ・タヴァレス(Rui Tavares)氏は2008年シリアに避難したイラクやパレスチナ難民の現状を視察する現場訪問を「希望の旅」と表した。また、リベリア難民として2004年にイギリスへ第三国定住を果たし、現在は難民への支援をしているアコイ・バジー(Akoi Bazzie)氏は議会で「難民の最大の願いは社会へ恩返しすることだ」と訴えた。
今年の欧州委員会(EC)はEU共通の第三国定住プログラム案を提出した。参加は任意であるものの、EU諸国での第三国定住の推進への大きな一歩へとなる。欧州議会市民権委員会は第三国定住を受け持つ部署を常時設置し、ECとしての第三国定住受け入れ増大へ向けて財政的な支援を推奨した。委員会に参加した議員の間では、EU諸国が統一の第三国定住基準を設けることが必要であるということ、また第三国定住者が速やかに社会統合するための、地域住民や地方行政の協力が必要であるという見解が同意された。
UNHCRは長年、EU共通の第三国定住プログラムの成立を訴えてきたが、同時に庇護国から母国に帰還できない、もしくは定住できない難民を受け入れることに前向きな欧州諸国の増加に後押しされてきた。しかし、解決に向けた統一的アプローチがいまだ必要とされている。
EUは過去6年の間、第三国定住を保護手段として研究してきた。UNHCRは欧州全土において第三国定住についてを議題として挙げており、包括的かつ共通の政策とより多くの第三国定住受け入れ先を求めてきた。さらに欧州議員の現地訪問により、苦境に立つ難民や難民の現状に直接触れる機会を設けてきた。シリアへの現状視察によって、2008年、欧州諸国はイラクから10,000人の難民の受け入れに同意した。同年には緊急事態のための一時的な避難所がルーマニアで開設された。
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