UNHCRは8月19日から21日にかけて、セネガルの首都ダカールで、フランス語圏諸国の人道支援従事者を対象に緊急事態に備えた準備と対応のワークショップを開催しました。この取り組みは今年新たに立ち上がった研修プラットフォーム「アフリカeセンター」の一環であり、フランス語圏の11カ国から参加者が集まりました。
アフリカeセンターは、UNHCR本部で緊急対応を担当する部署が管轄しています。現地の当局やNGOの能力強化、人道支援従事者をつなぐプラットフォーム構築を目指しており、すでに運用が進んでいるアジア・太平洋地域を対象とした同様の取り組みの成果に基いています。
UNHCR西・中央アフリカ地域局副局長のザビエル・クリーチは、「西・中央アフリカでは強制移動が増加しており、紛争により1,400万人以上が故郷を追われています。この現実からも、ローカライゼーション(地域の特性に合わせた対応)は重要です」とコメントしています。
UNHCRは数十年にわたり、アフリカ全土の多くの緊急事態への対応を行ってきており、その多くはフランス語圏です。現在、アフリカの難民・国内避難民、無国籍者の数は4,200万人近く、世界統計の3分の1を占めています。過去3年でUNHCRは世界で150件近くの緊急事態に対応し、その半分以上がアフリカでの対応です。
2023年だけでもUNHCRは29カ国で43件の緊急事態を宣言しており、過去10年で1年に対応した緊急事態としては最多です。このなかでUNHCRは、アフリカでは16カ国30件の緊急事態において、現在進行中の人道危機、特に、紛争が再び勃発したことで何百万人もが避難を強いられたチャド、サヘル地域、コンゴ民主共和国などで、現地政府やパートナーと協力して必要な保護と支援を提供しています。
今回のダカールでのワークショップは、5月にケニアの首都ナイロビで英語圏を対象に行われた初回に続き、アフリカeセンターとして2回目のワークショップとなります。フランス語圏の参加者は、各国の緊急事態の度合い、難民への対応や緊急時の対応力の強化の必要性に基づいて選ばれました。
アフリカeセンターによる能力強化プログラムは、実践的な参加型ワークショップとオンラインによるフォローアップセッションで構成されており、「緊急事態におけるリーダーシップ」「人道支援の交渉」「緊急事態への準備と対応」などの主要テーマに焦点を当てています。参加者は、危機管理、プレッシャー下における意思決定、効果的な情報伝達、緊急事態における戦略的な計画策定など、リーダーシップ能力を強化するためのプログラムを受講します。
アフリカeセンターは、日本政府の資金協力によって運営され、これまでも人道支援従事者の能力強化に大きく貢献してきました。在セネガル日本国大使館の広瀬真一参事官は、「アフリカの友好国に対する日本の協力は、オーナーシップと南南協力の推進に多大な貢献を果たしています。今回も同様に、アフリカeセンターのイニシアティブがこうして実現していることをうれしく思います。ワークショップのテーマはアフリカにおける日本の協力の目的の1つであり、また、アフリカ開発会議(TICAD)の主要な柱の1つでもある、人間の安全保障の強化に直結しています」と話しました。
ブルキナファソのキリスト教救援開発機構(CRED)のミリアム・ラングレン プロジェクトコーディネーターは、「緊急事態におけるリーダーシップは、人道支援の介入や交渉の成功に大きく影響するため非常に重要です。今回学んだことは重要でしたが、個人的には『感情的知性 (Emotional Intelligence)』の重要性が最も印象に残りました」と感想を述べました。
今回のダカールでのワークショップに加えて、アフリカeセンターは、現地の人道支援従事者がアフリカ全土で緊急事態への対応を適切に実施できるよう、今後もワークショップやオンラインセッションを通じた能力強化を続けていくことを計画しています。
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