10月中旬、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官の訪日にあわせて、UNHCR国会議員連盟(UNHCR議連)による特別会合が開かれました。
冒頭、UNHCR議連会長の逢沢一郎衆議院議員は、「緊迫するイスラエル・パレスチナ情勢、世界のいたるところで続く厳しい難民状況に、私たちはどう向き合い、行動していくべきなのか、こういう時だからこそ、この場でしっかりと議論したい」と話しました。
続いて、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官より、世界の難民情勢とUNHCRの活動についての報告がありました。イスラエル・パレスチナ間の争いについては、なによりも停戦、和平交渉が必要であると強調したうえで「今後、この争いがこの地域、周辺国にどう波及していくか分からず、国際社会からのさらなる支援が重要になってくることは間違いない」とし、現場でのニーズが増える一方で、資金やリソースは減っており、必要な支援を届けることができていないと深刻な懸念を示しました。
このような状況において、日本の政府、個人や企業からの継続的な支援は、難民支援の現場で大きな力となっていること、日本が推進する「人道と開発と平和の連携」や「持続可能な開発目標(SDGs)」、元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんが提唱してきた「人間の安全保障」は、世界の分断が進む今、重要性を増していることを強調しました。また、日本国内でも、補完的保護の導入や第三国定住など、故郷を追われた人々に対する重要な取り組みが進んでいることを承知しており、今年12月に開催される「グローバル難民フォーラム」において、日本が共同議長国として、世界の国々がひとつになるために議論をリードする存在となるべきであると期待を込めました。
これを受けて、今年12月の「グローバル難民フォーラム」に出席予定の以下代表者による発表がありました。
外務省 遠藤和也 国際協力局長
日本は「難民に関するグローバル・コンパクト」の4本柱に沿って、人間の安全保障の視点に立ち、持続的かつ希望ある政索を積極的に推進してきた。世界で厳しい難民情勢が続くなかで開催される今回の「グローバル難民フォーラム」において、日本は共同議長国として、「人道と開発と平和の連携」に関する「宣言(Pledge)」を提出予定であり、日本国内で賛同者を募って協力の輪を広げる働きかけを行っている。これからも民間セクターや市民社会とも協働し、G7議長国、国連安全保障理事会の非常任理事国としての責任を果たすべく、オールジャパンで取り組みを進めていきたい。
UNDPハジアリッチ秀子 駐日代表
UNDPは難民支援の現場でUNHCRとも密接に連携しながら、尊厳と自助努力、中長期的視点から取り組みを進めてきた。日本政府とも「人道と開発と平和の連携」を通じて、難民と受け入れコミュニティの調和を図りながら、世界の危機への対応、他の新興国へのロールモデルとなる取り組みを進めていきたい。
JICA宮崎桂 理事
UNHCRは人道支援を、JICAは受け入れ国の地域の負担軽減と難民の自立に向けた中長期的支援と、年1回の戦略協議で意見交換を行いながら、お互いの強みを生かした難民支援を進めてきた。これからも難民と住民の双方のニーズにあった計画の策定を進めていくために、国際的な協調を推進していきたい。そのうえでも日本がこれから4年間「グローバル難民フォーラム」の共同議長国を務めることは非常に重要であり、日本の知見や経験を生かし、JICAも開発協力機関として難民受け入れ国に貢献していきたい。
これらの議論を受けて、逢沢議員は「日本は2011年、難民条約発効60周年と日本の難民条約加入30周年のタイミングで、難民の保護と難民問題の解決策に関する決議を衆参両院全会一致で行った。UNHCR議連の原点でもあるこの決議に、今こそ立ち返る時だ」と訴え、「グローバル難民フォーラム」で日本が共同議長国としてリーダーシップを発揮し、国際社会に「難民に関するグローバル・コンパクト」の理念を浸透させていかなければならないと締めくくりました。
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