フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は、高等弁務官として8回目となる訪日(2023年10月18日~20日)の総括を日本記者クラブで行いました。
冒頭、現在イスラエルとパレスチナで続いている紛争について、UNHCRは現場での人道支援活動は管轄外であると前置きしたうえで、深刻な人道危機の広がり、その影響に対する大きな懸念を示しました。
グランディ高等弁務官は2010~14年に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の事務局長を務めていることからも、相次ぐ一般市民への攻撃、インフラの破壊に大変心を痛めているとし、現場の複雑な状況は想像に難くないが、一刻も早く、適切に人道支援が届けられるようになること、停戦と和平交渉が行われることが重要であると訴えました。
UNHCRは人道支援機関として、他の国連機関と連携し、それぞれの役割のもとに、力を合わせて取り組んでいかなければならないと強調しました。
また、今回の人道危機は、世界各地で続いている危機ともつながっており、相互にさらに影響がおよび、広がっていくことは避けられないと説明。現在も、スーダン、ウクライナ、エチオピアなど、複数の危機が同時に重なり合うように起こっており、そういった危機についても、決して忘れてはならず、支援を届け続けなければならないと強調しました。
現在、世界では紛争や迫害により1億1,000万人を超える人が故郷を追われています。この数字は10年で2倍、かつてないほどに人道支援のニーズがっているものの、必要な財源が増加していないことへの深刻な危機感を示しました。今年も残すところ3カ月を切った現時点で、UNHCRの予算は年間に必要な42%にしか調達できていません。
そのような世界情勢のなかでの今回の訪日では、UNHCRにとって長年の重要なパートナーである日本の政府、企業、自治体などさまざまなステークホルダーと面談し、難民の現状について共有、さらなる支援の要請を行ったと話しました。
そのなかで、上川陽子外務大臣との会談では、世界の難民情勢に対する継続的な支援とUNHCRとの連携強化について、有意義な意見交換ができたことを共有。国内の難民問題については、出入国管理及び難民認定法の改正を経て適用される補完的保護、難民条約の解釈、第三国定住などについての要望について、小泉龍司法務大臣に伝えたと話しました。
最後に、今年12月にジュネーブで開催される「第2回グローバル難民フォーラム」について、難民をテーマした世界最大規模の会議として、国や政府のみならず、市民社会やNGO、産業界、学術機関、難民当事者などが一堂に会する貴重な場であると紹介しました。
グランディ高等弁務官は、このフォーラムで日本が共同議長国を務めることへの謝意を伝えるとともに、日本が実践している“社会全体で取り組む難民支援”を共有し、さまざまな議論をリードしてほしいと期待を述べました。
現在、世界では分断が進み、各地で緊張関係が高まるなかで、気候変動、強制移動、貧困などいずれの課題を取っても、国際社会が一体となって対応していくことが重要であるとして、「グローバル難民フォーラム」をその動きを促進する機会としたいと話しました。
そして、故郷を追われた人々の支援において、資金的にも政治的にも、国際社会で重要な役割を果たしている日本のさらなるリーダーシップを期待していると訴えました。
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