現在、世界で故郷を追われている人は1億1,000万人以上。第二次世界大戦後最大、この10年で2倍となっています。
その数字の裏には、一人ひとりの命と尊厳があります。故郷を追われた人々の未来を守るためには、一つの国や地域だけではない、”社会全体で取り組む難民支援”が必要不可欠。「難民に関するグローバル・コンパクト」でも掲げられている重要なキーワードです。
今年12月に開催される「第2回グローバル難民フォーラム」は、世界で拡大する難民問題を社会全体で向き合っていくために、全世界から難民支援の担い手が集まり、それぞれの取り組みや解決策の事例やアイデアを共有する場です。
今回のフォーラムで日本は共同議長国を務めることが決定しており、国際社会に日本発の難民支援を広める絶好の機会でもあります。日本発のUNHCRとの連携事例として、自治体ぐるみで難民支援に取り組む文京区を紹介します。
6月20日は「世界難民の日」。日本各地でも難民問題について広く伝え、支援の輪を広げるため、毎年さまざまな取り組みが実施されています。
今年は「難民を支える自治体ネットワーク」の署名自治体でも、それぞれの地域の強みを生かして、創意工夫にあふれたイベントが実施されました。そのひとつが文京区です。
2020年に「難民を支える自治体ネットワーク」に加わった文京区では、これまでもUNHCRと連携した写真展や映画祭をはじめ、2021年にはパラリンピック難民選手団のホストタウンとなり区内の小学生との交流会を実施するなど、日本の自治体として難民支援に積極的に関わってきました。
今年の「世界難民の日」には文京区の主催で、6月18日から25日にかけて、「見て・聞いて・知る『世界の難民』」を開催。難民キャンプのテントの展示、難民問題について知る講演会や写真展、世界難民の日こいのぼりの掲揚、そして、ブルーライトアップに至るまでさまざまな企画が実施されました。
文京区民センターで行われた講演会では、文京区の難民支援をリードしてきた成澤廣修区長が冒頭にあいさつ。世界では1億1,000万人以上が故郷を追われていることに触れ、「この現状を知り、自分ごととしてとらえて一人ひとりが行動に移し、今日知ったこともぜひ拡散してほしい」と呼び掛けました。
続いて、UNHCR駐日代表の伊藤礼樹が、30年以上の現場経験も交えながら世界の難民問題の現状について紹介し、「難民は支援を必要としているかわいそうな存在ではない。さまざまな困難に立ち向かい、乗り越えてきた強い人々だということを知ってほしい」と訴えました。また、国連UNHCR協会の国連難民サポーターであり、ファッションデザイナーとして活躍する渋谷ザニーさんは、8歳のときに家族と避難することになった経緯、日本で経験したさまざまな困難、自身が代表を務める「世界難民の日こいのぼり」の活動に込めた想いなどについて話しました。
当日会場には区内外から小学生から社会人まで多くの方が参加。「 “敵は一人でも少ないほうが良い、味方は一人でも多いほうが良い”というザニーさんの言葉が印象に残った」「本やインターネットだけでは得られない情報を聞くことができた」「ウクライナからの難民の方々が区内に多いと知って、機会があればお話を聞いてみたい」などの感想が寄せられ、難民問題をより身近に考えるきっかけとなりました。前年度から事業の実施に向けて奔走してきた文京区のダイバーシティ推進担当は「世界の難民や難民支援等について、少しでも多くの区民に知ってもらいたいという思いから、この事業を企画し進めてきました。開催期間中は、UNHCRの皆様のご協力もあり、子どもから大人まで多くの方々にご来場いただくことができました。この事業が、難民について考え、理解を深めるきっかけとなってくれると嬉しく思います。」と振り返ります。
また文京区では、今回の一連の企画を「文京区民チャンネル」でも番組か。文京シビックセンターに設営されたUNHCRの支援現場で使われている難民キャンプの家族用テントの様子などが、文京区Youtubeで公開される予定です。
草の根レベルで企画に携わった、一人ひとりの “伝えたい”想いにより実現した文京区の取り組み。これからもUNHCRは自治体と連携し、日本各地から難民支援の輪を広げていきます。
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