フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は、高等弁務官として7回目となる訪日(2022年11月7日~9日)の総括を日本記者クラブで行いました。
今回の訪日の主な目的は、世界各地で故郷を追われている人々への理解促進を行い、日本の難民支援の輪を広げることであると説明。政府要人、自治体、民間セクター、市民社会など、日本のさまざまなアクターと面談できたことは有意義であったと振り返りました。特に、日本で共生社会の実現を目指して活動する日本と難民の学生が一堂に会する場に参加できたことは、非常にうれしい経験だったと話しました。
現在、世界の強制移動の数は1億300万人、第二次世界大戦以降最大の数に達し、その背景には、紛争や暴力に加え、気候変動など新たな要因も大きく影響し、世界は重大な局面を迎えていると指摘しました。また、ロシアのウクライナ侵攻が状況を劇的に変化させた要因の一つであることは間違いなく、その一方で、シリア、エチオピア、ソマリア、アフガニスタン、バングラデシュなど、各地で深刻な人道危機が続いていることを忘れてはならない強調しました。
このような状況のなかで、UNHCRは大幅な資金不足に直面しており、このままでは活動を縮小しなければならない場所も出てくると懸念を述べ、その観点からも、日本への訪問はさらなる協力を促すために大変意味のあるものであったと訴えました。
2022年、これまで日本政府からの拠出金は前年比で微増、日本の企業や市民からの寄付が大幅に増えたことは特筆すべきであるとし、ウクライナ危機をきっかけに故郷を追われた人々との連帯が高まっていると感じており、これを機会にUNHCRとしても日本で難民問題への啓発を強化していきたいと話しました。
また、すでに日本には難民支援における好事例も多くあり、その一つとして、UNHCRのグローバルパートナーであるファーストリテイリングとバングラデシュでの連携事業を新たに発表したことを紹介しました(プレスリリースはこちら)。
コロナ禍で中断されていた第三国定住の再開をはじめ、JICAによるシリア人学生の受け入れ事業、アフガニスタンやウクライナなどからの難民受け入れは歓迎すべき取り組みであり、法務省と継続的な協力関係の強化に向けて話ができたのは意義深かった話しました。また、今回の訪問先の一つである横浜市でウクライナからの難民と話をすることができ、彼らが地域の人々にあたたかく受け入れられていることを知ることができたことにもふれました。
日本が難民を受け入れていくためには、法律や制度の整備、省庁間の調整など、さまざまな課題があることは十分理解しているとしたうえで、日本は難民受け入れに対する懸念や不安を払しょくすることで、真の難民受け入れ国になることができるはずだと訴えました。
最後に、2023年は日本にとって大変重要な年であると認識しており、国連安全保障理事会の非常任理事国、主要国首脳会議(G7サミット)のホスト国として、国際社会における日本の役割にさらに期待したいと話しました。また、日本が2023年12月に開催される「第2回グローバル難民フォーラム」の共同議長国にも決定していることを紹介し、この分断された時代において、平和、対話、国際協力などにおいて、日本が推進国となってほしいと期待を込めました。
▶会見の動画はこちら(日本記者クラブウェブサイト)