2022年6月20日、UNHCRブルーに染まった札幌市時計台
© UNHCR/Yuji Akasaka
6月20日は「世界難民の日」。難民の保護と支援に対する関心を高め、世界各地で行われている難民支援活動への理解を深める日です。
今年に入り、ウクライナへのロシアの軍事侵攻、世界各地での人道危機が重なり、難民支援のニーズは拡大、多様化の一途をたどっています。2022年5月時点で、世界で故郷を追われた人は1億人を超えました。この衝撃的な数は、私たち一人ひとりの今すぐの行動を求める警告ともいえます。
2022年の「世界難民の日」にUNHCRが発信したテーマは「誰でも どこでも いつでも 安全を求める権利を」。すべての人が平等に、どこでもいつでも、安全を求めることができる社会―。その実現のためには、社会全体での取り組みが必要不可欠。日本各地でも「世界難民の日」をきっかけに、故郷を追われた人に対する想い、難民支援の輪が広がりました。
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■ その一つが、UNHCR駐日事務所の呼びかけによる日本各地のランドマークでの「ブルーライトアップ」。全国の自治体や企業、団体などの協力を得て、昨年の約2倍、41カ所のランドマークがUNHCRブルーに染まりました(点灯箇所はこちら)。また、UNHCRブルーに染まったランドマーク、身近なブルーを投稿するSNSキャンペーンに賛同し、「世界難民の日」までの1週間、SNSのタイムラインにはたくさんのブルーとメッセージが投稿されました。
そのほかにも、UNHCRをはじめ、難民支援に携わる団体や学校の企画で、たくさんのイベントやキャンペーンが行われました。その一部をご紹介します。
■ 6月19日に国連UNHCR協会がオンラインで開催したのは、今回で3年目を迎える「UNHCR WILL2LIVE Music」(9月末までアーカイブ公開中)。今年はトークと音楽の2部構成となり、トーク部分では、UNHCR難民高等教育プログラム(RHEP)を通じて日本の大学院で学ぶシリア出身のスザンさんとの対談、ウクライナと周辺国の取材を行った評論家・ラジオパーソナリティの荻上チキさんとUNHCR緊急対応チームの青山愛による現地レポートを通じて “難民問題のいま”が伝えられました(レポートはこちら)。
また、UNHCR親善大使MIYAVIもトークと音楽で参加しました。冒頭で「今日のイベントを通じて、僕自身も学びたい」と話し、最後にはCrystal Kayさんを迎えて力強いパフォーマンスも披露。「すぐになにかを解決できるわけではないけれど、音楽はみんながひとつになることができるツール。入口は自分のための難民支援でもいい。でも自分だけでなく、自分と誰かのためにできることをみんなでつなげていけたら」と伝えました。
▶2022年「世界難民の日」UNHCR親善大使MIYAVIの動画はこちら
■ 6月20日「世界難民の日」当日、午前中には、岡山で誕生した #世界難民の日こいのぼり が東京・渋谷の国連大学前に掲揚されました。故郷を追われた子どもたちの健康と幸せを願って作られたブルーのこいのぼり。その力強く空に向かって泳ぐ姿を道行く人たちが見上げていました。
■ またこの日、UNHCR駐日事務所と国連UNHCR協会の企画で、国内外で難民支援に携わってきた日本のステークホルダー、これからさらに一歩を踏み出したいと考えている皆さんとの交流会が行われました。冒頭、UNHCR駐日首席副代表のナッケン鯉都と国連UNHCR協会の川合雅幸事務局長は、これまでさまざまな形で難民支援に取り組んでくださった方々にお礼を伝えるとともに、1億人を超えた世界各地で故郷を追われる人の現状、UNHCRの対応などを紹介し「行動の原点は知ることから」と訴えました。また、UNHCR国会議員連盟の会長を務める逢沢一郎衆議院議員も「難民問題は、ウクライナだけでなく世界各地で起こっているということ、その解決に向けて、みんなで力を合わせて物事を動かしていかなければならない、というメッセージをしっかりと発信していきたい」と話しました。
続いて、東京2020パラリンピック難民選手団 の一員としてパラ水泳に出場し、今年も「世界難民の日」にかけて来日したイブラヒム・フセイン選手も登壇。「昨年のパラリンピックの時は、皆さんと直接交流することができず残念でした。でも今回、日本の皆さんの優しさや人間性にふれることができてうれしい」と話しました。そして、スポーツは自分の人生のすべてであり、スポーツを通じて難民を支援するのが自身の使命であるとしたうえで、障がいのある難民が送っている日々の厳しさを知って、多くの人に寄り添ってほしい」と訴えました。
そして、モルドバの視察から戻ったばかりのUNHCR親善大使MIYAVIからの報告もありました。今年の2月末以降、ウクライナと国境を接するモルドバには多くの難民が避難しており、UNHCRも活動を拡大して緊急支援を行っています。
MIYAVIにとっては、2020年1月のコロンビア以来となる公式のUNHCRの現場視察。「現場に行って、自分の目で見て、自分の耳で話を聞くことの重要性を再確認した」と話し、モルドバで出会った子どもたちの多くは父親がウクライナに残っていることから不安を感じていること、一緒にスポーツをしたり歌を歌ったりすることで少し笑顔が見られたこと、決して豊かとはいえないモルドバが国を挙げて寛大に難民の受け入れを行っていることなどを紹介しました。
「音楽を通じて、戦争を止めることも、難民の方を救うこともできない。でも、音楽を通じてコミュニケーションをとったり、現場で出会った人たちの声を届けることが自分の役割」と力強く話し、「世界難民の日」をきっかけに、一人でも多くの人が故郷を追われた人々に想いをはせてくれたらうれしいと締めくくりました。
後半は、日本で暮らすクルド人の高校生の姿を描いた映画『マイスモールランド』の上映、UNHCR駐日事務所インターンの司会で川和田恵真監督とのトークも行われ、なぜこのテーマを選んだのか、ドキュメンタリーでない形式にしたのかなど、この映画にかけた想いを語りました。ウクライナ危機をきっかけに高まった難民への共感を広げるために日本社会がどう難民問題に向き合っていくのか、日本からなにができるかを、皆さんと一緒に考える場となりました。
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3年目を迎えるコロナ禍、そしてウクライナをはじめ世界各地で人道危機が続く中での「世界難民の日」。日本各地でまかれた難民への思いやりの種が芽吹き、花開いて広がっていくことを願って、UNHCRはこれからもさまざまなパートナーと連携しながら活動を続けていきます。
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