隣国シリアから大量の難民を受け入れているヨルダンでは、新型コロナウイルスのパンデミックによる社会経済的影響により、国内全土が脆弱な状態に陥っています。日本政府はこれを受けて、ヨルダンに逃れてきた難民のためのコミュニティセンターの支援、職業訓練の機会提供への支援の継続を決定しました。
令和2年度補正予算による487万5,000米ドルの支援は、シリア難民へのカウンセリング、こころのケアなどコミュニティベースの保護における重要なサービスに加え、レクリエーションや自己啓発などに関連する活動にも充てられます。現在、コミュニティセンターはパンデミックにより閉鎖されていますが、多くの活動はオンラインへと移行し、ステイホームが求められる中で難民たちにとっての学びと成長の場として、また、コミュニティの一員であることを認識するための手段として重要です。
嶋﨑郁 駐ヨルダン日本国大使、UNHCRヨルダン代表ドミニク・バルチュは懇談を行い、今回の支援がコミュニティの能力強化にどう貢献し、ヨルダン国内の何千何万もの難民の希望につなげられるかについて意見交換を行いました。
バルチュ代表は「新型コロナウイルスのパンデミックにより直面している困難に対して、UNHCRは難民のボランティアと協働で取り組みを進めています。日本からの支援は、難民の不安への効果的な対応、この困難な時間の中での安全な場所の提供に貢献するものです」と話しました。
嶋﨑大使は「ヨルダンでのUNHCRの活動は、新型コロナウイルスの深刻な影響を受けている脆弱な人々にとって必要不可欠です。シリア難民に対する職業訓練などのサービスの提供において、日本の支援が効果を発揮することを強く望みます」とコメントしました。日本はシリア危機が始まってから継続してきた脆弱な立場にある難民への支援の延長を決定。中でもコミュニティセンターに対する支援は、難民のみならずヨルダンの受け入れコミュニティにも重要な役割を果たすもので、平和的共存、社会的結束につなげるうえで必要不可欠です。
「この感謝の気持ちは、とても一言で表現できるものではありません」。コミュニティサポートセンターのボランティアの一人、アーメッド・エルミはそう話します。「センターでの仕事は私の人生を変えました。新型コロナウイルスのパンデミックの前から、そしてその間も、難民コミュニティとUNHCRの間をつなぐ役割を果たすことで、私は自尊心、規律を身につけることができました。効果的に行動できるようになり、頼られる人になれたんです」。
今回の支援に加えて、JICAもアズラック難民キャンプに3,000枚の非医療マスクを寄付しました。このマスクは、JICAがヨルダン人女性の刺しゅうブランド「Tribalogy(トライバロジー)」との連携プロジェクトの一環として、難民の女性たちによって作られたものです。新型コロナウイルスのパンデミックによる影響が続く中、ヨルダンでは国際社会からの継続的な支援が引き続き重要です。
シリア危機から10年がたった今も、日本のシリア難民との連帯が強まっていることは、難民支援の現場で大きな力となっています。UNHCRはヨルダンへの日本からの支援に感謝を示すとともに、最も脆弱な難民への支援と保護を提供していくために、これからも日本大使館と連携強化を図っていきたいと考えています。
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