2021年2月23日、オンラインイベント「コロナ禍に考える:スポーツのチカラと難民アスリート」が、UNHCR駐日事務所、国連UNHCR協会、上智大学、上智大学ソフィア会の共催で行われました。
新型コロナウイルスの感染拡大による困難の中で、脆弱な環境下にある難民たちも、自ら行動し工夫をしながら日々を懸命に生きています。その中で、スポーツに希望を見出し、トレーニングに励む難民アスリートの存在をご存じでしょうか。
本イベントでは、スポーツにどのような“チカラ”があり、難民支援の現場でどのような役割を果たしているのか、日本から一人ひとりになにができるのかなどについて議論しました。
上智大学の曄道佳明学長は冒頭のあいさつで、「コロナ禍においては、助け合い、そして共生社会の在り方が見直されてきている。難民の方々のおかれている環境を考えると、より大きな力、支援が必要であると感じる」とし、その一つとして、スポーツのチカラが挙げられるのではないかと話しました。また、上智大学で教べんをとり、日本人初の国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子さんの言葉を引用し、国際貢献は私たち自身が当事者であり、責任を分担していくことが大切であると訴えました。
第一部では、UNHCR駐日事務所のディアナ・ビティティが「スポーツと難民保護」をテーマに基調講演を行いました。難民支援の現場では、スポーツが保護を必要とする難民への安全な場所の提供にもつながっていること、スポーツが共通言語となり、難民と受け入れコミュニティとの関係構築にも貢献している事例などについて紹介がありました。また、2016年のリオ五輪で初めて結成された「難民選手団」にもふれ、難民アスリートの活躍が全世界の難民の希望にもなっていることなどについても話しました。
続いて、国連UNHCR協会報道ディレクターの長野智子さんをモデレーターに迎え、日本の長距離界、マラソンブームを牽引してきた元オリンピック・マラソン選手の瀬古利彦さん、上智大学外国語学部4年の藤井里奈さん、UNHCRからビティティが参加し、パネルディスカッションが行われました。
瀬古さんはマラソン選手としての自身の経験を通じて、スポーツとは「最後まであきらめないことが大切。自分との闘いを乗り越えるためには練習しかない」と感じたとし、それが結果にもつながってきたと話しました。
また、タンザニアの難民キャンプで「EKIDEN for PEACE」を開催した時には、「過酷な状況にある難民の人たちに、最初はなぜ走るのかと聞かれた。でも走ったらとても気持ち良かった、またやりたいと言ってもらえた」と振り返り、難民でも誰でも、みんなが一緒に取り組めるのがスポーツだと強調しました。
ドイツ留学時代、初めて難民について身近に感じたという藤井さんは、ドイツでは難民を助けるというよりも、一緒に生きていくために一緒にがんばっていく、“win-win”の取り組みが浸透していたことが印象に残っていると話しました。その中で「スポーツは言葉が通じない環境でも、コミュニケーションをとる一つの大切な手段になっていると思う」と話し、日本でも難民について関心をもっと持ってもらいたい、同世代の若者たちにも、自分だからできる得意なことを生かしたボランティアなどに取り組んでほしいと訴えました。
長野さんは、ケニアやヨルダンの難民キャンプを訪れた経験から、スポーツは相手と闘ったり傷付けたりするための手段でなく、相手へのリスペクトなどを学ぶための手段であると強く感じたといいます。
難民の半分以上が18歳未満の子どもであることから、若者に対するスポーツの取り組みの重要性が高まる中で、実際にスポーツが原動力となり自信や生き抜くチカラにつながっていることも事実です。「ジェンダー、性的指向などにかかわらず、すべての人が平等にスポーツにアクセスできる環境が大切」とビティティは訴えました。
最後に、上智大学ソフィア会の鳥居正男会長からは「今日のイベントを通じて、私たちにできることを考えていきたい。日本から支援の輪が広がっていくことを願っている」とメッセージがおくられました。
本イベントのアーカイブは、UNHCR駐日事務所のYoutubeでこちらからご覧になれます。