新型コロナウイルスの脅威が広がる中、日本全国の自治体、企業・団体などの協力を得て、全国25カ所で実施した「世界難民の日」のブルーライトアップ。日本から発信された難民支援に対する“連帯”のメッセージは、日本国内のみならず海を越え、アメリカの一都市にも届きました。
その背景には、陸前高田市(岩手県)とその姉妹都市の絆がありました。
陸前高田市とデルノーテ郡クレセントシティ市が姉妹都市協定を結んだのは2017年。交流のきっかけは、2011年の東日本大震災後、津波により甚大な被害を受けた陸前高田市内の高校の実習船がクレセントシティ市に漂着したことでした。現地の生徒たちが募金活動などを行い、さまざまな人の協力を得て実習船が返還されたのを機に学校間の交流が始まり、姉妹都市の締結へと発展しました。
2020年「世界難民の日」、陸前高田市は難民支援の輪を広げることに加え、「誰一人取り残すことなく、新型コロナウイルスの危機に打ち勝つ」という思いを込めたUNHCRの取り組みに賛同し、ブルーライトアップへの参加を表明しました。そして、ラオス山岳少数民族であるモン族の難民約600人が定住しているクレセントシティ市にその企画を伝えたところ、クレセントシティ市とデルノーテ郡も賛同し、両都市での参加が決まりました。
こうして、6月20日「世界難民の日」を含めた3日間、陸前高田市の「奇跡の一本松」がライトアップされたタイミングに合わせて、クレセントシティ市の港を見下ろす「バッテリーポイント灯台」もブルーに灯り、姉妹都市の絆による同時ブルーライトアップが実現しました。
さらにクレセントシティ市では、郡議会と市議会により「世界難民の日」顕彰宣言書が全会一致で決議されました。そこには、デルノート郡クレセントシティ市が新たな“故郷”として多くの難民を迎え入れてきたこと、彼らが市の社会・経済発展の一翼を担い、地域の多様性の実現にも貢献してきたことが明記されています。
新型コロナウイルスの危機の中で、世界各地でも難民が自身のスキルや知見を避難先で発揮し、受け入れコミュニティの中で助け合いの連鎖が起こっています。これはまさに、地域の多様性によって生まれた動きです。ある日突然、医師だった人、縫製職人だった人、一家を守る父親や母親だった人が、紛争や迫害などにより故郷を追われて難民になる―。そこには一人ひとりの存在や誇り、能力から生まれたストーリーがあり、決して「難民」という言葉でひとくくりにできるものではありません。
互いに多様性を認め合い、問題解決に力を合わせ、より良い社会を実現していく。UNHCRも難民支援機関として、そうした地域づくりを後押ししていきます。
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