「みなさんは、毎日当たり前のように服を着ています。でも、そもそもなぜ服を着るのでしょう?」
7月初旬、東京・世田谷の烏山北小学校。この日の午後、5年生の授業に“先生”として参加したのは、ジーユー世田谷砧店で勤務する沖山祐太郎さん。UNHCRのグローバルパートナー、ファーストリテイリングが2013年から実施している“届けよう、服のチカラ”プロジェクトの1コマです。
日本国内で子ども服を集め、難民支援の現場などに届けるこのプロジェクト。毎年6~7月にかけて、ユニクロやジーユーの社員が出張授業で “服のチカラ”や難民問題について伝え、子どもたちが中心となって校内や地域の人々にリサイクル服の回収を呼びかけています。
「難民って聞いたことがありますか?」
「食べるものや服がない人!」「大変な生活を送っている人!」
沖山さんの問いかけに、元気に手を挙げて答える子どもたち。「全部正解です。みなさんと同じように、小学校に行って勉強したり遊んだりしていたのに、突然、戦争などによって生活が変わってしまうんです」。沖山さんの説明に、子どもたちの表情が変わります。
「家や食べ物は届けられないけれど、洋服だったら協力できます。1着に込められた気持ちが、1人の難民の生活を助けることにつながる。今日は皆さんにそれを伝えたくて来ました」
烏山北小の子どもたちはこの授業後、校内や地域の人たちに学んだことを伝えながら子ども服を集めました。
開始から8年、“届けよう、服のチカラ”プロジェクトは全国に広まり、それぞれが創意工夫にあふれたアイデアで服を集めています。ファーストリテイリングでは、2017年度から特に優れた取り組みを“届けよう、服のチカラ”アワードとして表彰。2018年度に全国最優秀賞を受賞した、兵庫県立三木北高等学校でもユニクロ三木店の佐藤洋介さんと丸山梨奈さんによる出張授業が行われました。
三木北高等学校がこの活動に参加するのは4年目。柴﨑茂昭教頭は「タンスで眠っていた衣服が、このプロジェクトを通じて難民の方々の手に渡る。活動を続ける中で、私たち教員、そして生徒も、世界とのつながりを強く認識するようになりました」と、話します。
活動を通じて、地域との関わりが増え、生徒の進路選択などにも影響が出ているそうです。
より多くの子ども服を集めるために、3年生が中心となり、市役所、小学校、保育園、ラジオ番組などを巻き込んで、プロジェクトのPRをしたり、ポスターやリサイクルボックスの設置を行ったりしています。「活動を始めてから、地域とのコミュニケーションが増えた。毎年プロジェクトを始める時期になると、地域の皆さんからプロジェクト実施について問い合わせがくるようになった」とプロジェクト担当の石田武史先生は語ります。
2018年度にプロジェクトに参加した当時高校3年生だった女子生徒は、難民問題への関心が深まり、将来は難民問題に携わりたいと、大学では児童心理学科への進学を決めたそうです。
担当の先生方に今年の目標を聞くと、「今年も全国最優秀賞を目指したい。今まで先輩生徒たちがやってきたことから学んで、新しいことにも挑戦したい」と熱心に説明してくれました。