ニカラグアで反政府運動が勃発した2018年、小児科医だったサラは、怪我をした人々の治療に従事していました。弁護士のブロリオも、刑務所から逃走した人たちの人権保護に奔走し、大学教授のカルロスは反政府運動に参加する生徒たちの味方であり続けました。
2018年4月以降、コスタリカには6万8,000人もの人がニカラグアから安全を求めて避難をしています。政府による弾圧は反政府運動の参加者のみならず、その支援者や活動に賛同する人たちにまでおよんでいます。
「職場や安定した生活を手放して、子どもたちには本当に申し訳ないけれどそうするしかなかったんです。もう安全に暮らせないと思った。避難しなければ、殺されていたかもしれない」と、サラは当時を振り返ります。
ニカラグア人権センターで弁護士として働いていたブロリオも、刑務所に収監されている反政府勢力の人権保護に関わっていたという理由で迫害の対象になりました。
「私の役割は声を上げられない人たちの“声”となること。しかし弁護士である私は、警察に対して声を上げ続けることが許されませんでした。かシャツやズボン、靴を詰め込み、家族に別れの言葉も残せないまま国境を越えました。誰もこのような状況は望んでいないはずです」
生徒たちと反政府運動に参加したカルロスに対する脅迫は、より明確なものでした。銃による襲撃を3度受け、命の危険にさらされました。カルロスはこれ以上大切な家族を危険な目に遭わせることはできないと、コスタリカへの避難を決意しました。
コスタリカに避難したサラは、ウェブデザイナーとして働き始めました。以前のような医療関係の仕事には就けませんでしたが、サラは現在の仕事にやりがいを感じています。
ブロリオもシェルターでの生活を経て、ニカラグア人権センターの元同僚らとともに、ニカラグアから逃れてきた庇護申請者へ法的支援を行うNPOを立ち上げました。
カルロスは路上生活の後、医療関係の高校での教師の職を得ました。「いつかニカラグアへ戻ることを夢見ています」。いまだ国へ帰るには危険な状況ですが、彼らはその望みを決して捨てていません。
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