情勢不安が続くベネズエラから、安全を求めて避難する人の数は400万人。その半数以上が移動中にさまざまな危険に遭遇しています。性労働や物乞い、児童労働・・・。すべては命を守るためー。厳しい現実がそこにはあります。
カロリーナは、反政府運動に参加していることを理由に、公共サービスの使用に規制がかかるようになりました。水道やテレビ、音楽などが自由に使えなくなり、知的障害のある娘アリアナは、髪を引っ張ったり、自らを傷つけたりするように。政治的意見の違いから日常的にも抑圧を受けるようになり、一家は故郷を離れ、近隣のエクアドルに避難しました。
トランスジェンダーのサジャリーは、病気の母の薬が入手できなくなったため、ブラジルに渡りました。避難のためにほぼ全財産を使い果たし、頼れる人もおらず、厳しい選択を迫られました。「友人が性労働に就くことを勧めてくれた。抵抗はあったけれど生活がかかっていたから」。サジャリーは当時を振り返ります。結局、サジャリーはすぐに性労働を辞め、ダンボールでの路上生活が始まりました。
大学の司書として働いていたドミンゴは、コロンビアへの避難を余儀なくされました。まともな食事を数週間とることができず、生きることを諦めようとしたこともありました。「高齢なので、雇ってくれる人も、家を貸してくれる人もいない。自分ではまだまだ働けると思っているけど、社会から必要とされていないのです」と肩を落とします。
ベネズエラから避難を余儀なくされた人たちの救いとなっているのは、寛容に門戸を開いている近隣の国々です。しかし、一人ひとりの尊厳をもって生活していくには多くの課題があり、十分に支援が行きわたっているとはいえません。
ブラジルで路上生活を始めて1週間後、サジャリーはUNHCRの職員の助けを得て一時滞在施設に移り、今はマナウス初のLGBTIの難民のシェルターで暮らしています。
アリアナはエクアドルでテレビや音楽を自由に楽しめるようになり、ダンス教室にも通い始めました。でもまだ、必要とするサポートを提供してくれる学校が見つかっていません。
ドミンゴはコロンビア北部の避難所で過ごしながら、人生の次のステップへ歩みだそうとしています。
UNHCRはベネズエラ周辺の国々と協力しながら、避難を余儀なくされている人たちへの人道支援、公的サービス、権利へのアクセス向上のサポートに取り組んでいます。
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