フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は、8月28日~30日に横浜で開催された「第7回アフリカ開発会議(TICAD7)」に出席。TICAD7の各会合、各国政府要人などとの会談を経て、高等弁務官として5回目となる訪日の総括を日本記者クラブで行いました。
まず冒頭に、UNHCRは緒方貞子氏が高等弁務官の時代からTICADと密接な関わりがあること、アフリカの開発はUNHCRの活動にも大きく関係するものであると話しました。
今回のTICAD7でも大変意義深いもので、アフリカの難民一人ひとりの“声”を代表して届けることができたと振り返るとともに、世界では7100万人を超える人が故郷を追われており、その3分の1をアフリカが占めるという現実を今一度知ってほしいと訴えました。
河野太郎外務大臣(当時)との会談では、日本とUNHCR共通の課題について有意義な意見交換を行ったと話しました。その一つ、バングラデシュのロヒンギャ難民については、ミャンマーへの帰還が困難な状況にあるなか、当局と連携して安全の確保など環境整備を進め、自主帰還に向けた信頼醸成が必要であると話しました。
日本は難民問題の解決において重要なパートナーであり、2018年12月に国連総会で採択された「難民に関するグローバル・コンパクト(GCR)」の理念は日本が提唱してきた「人間の安全保障」にも通じるものだと強調。GCRでは人道支援以外の専門性を持つ組織との連携の重要性がうたわれていること、その一例として、すでにアフリカで実施されているUNHCRとJICAとの連携を挙げました。
グランディ高等弁務官は、これまでの日本の寛大な支援に感謝の意を示しつつも、かつて世界第2位のドナー国だった日本が現在は第5位であること、難民の増加を受けて日本からもさらなる支援が必要であると訴えました。他方、難民支援に35年以上にわたり取り組んできた株式会社富士メガネを例に、日本の民間から支援が大きな支えになっているとも紹介しました。
そのほかにも日本には、出入国在留管理庁の発足、第三国定住の拡大、シリア難民留学生への奨学金など歓迎すべき取り組みがありまだ向上の余地があること、他の先進国と比べると難民認定の基準が厳しいことにふれ、国内の庇護に関する法整備を求めました。
最後に、2020年東京五輪での「難民選手団」の結成が発表されたことは大変喜ばしく、難民とは、スポーツを楽しんだり、チャンスがあれば成功したいと思っている一人の人間で、私たちとなにも変わらない存在であることを伝える良いチャンスにもなると話しました。
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