ルワンダの首都キガリの旧工業地帯。流ちょうな現地語であいさつをしながら、曲がりくねった道をきびきびとした足取りで歩いていくアリは、20年前、ソマリアからルワンダに逃れてきた難民の一人です。
「ソマリアを離れる時は、混乱の中、とにかく前に進むしかありませんでした。ルワンダにたどり着いて、ようやく立ち止まることができた。でも、一体何から始めていいか分かりませんでした」
現地の言葉も分からず、葛藤に苦しみながらも、新たな土地で、自立して生きていくという強い意志をもっていたアリ。そんな彼は、疑いなく“ラッキー”でした。その一つが、1人のルワンダ人女性との出会い。後に妻となる彼女がそばにいたおかげで、多くのことを知ることができ、経営能力を開花させる環境を見つけることができました。
ルワンダ開発庁から身分証明書と営業許可証の発行を受け、現在は、日用雑貨を扱う小さな店を経営しています。タンザニア、ウガンダ、ケニアから運ばれてくる物資が集まる工業地帯で、商品の在庫にも不安がありません。
「ルワンダは差別がなく、平和です。私たち難民がここで暮らし、働く権利を政府が与えてくれたおかげで、納税の義務も果たすことができています。難民が社会に溶け込みやすく、生活環境は地元の人と何も変わりません」
現在、15万人以上の難民を受け入れているルワンダ。2018年12月に採択された「難民に関するグローバル・コンパクト」の指針に基づき、起業、医療や保険へのアクセス、銀行口座の開設、教育を受ける権利が保証されています。キガリのような都市で暮らす難民は1万2000人を超え、このような権利が難民の社会統合を支えています。
「少しずつ貯めてきたお金で、家と店を持つことができ、子どもたちを学校に通わせることもできています。教育を受けることで、私たちと同じ問題に遭遇しなくてすむ。良い人生を歩めるように、子どもたちの権利を守りたい」。キャンプの外でも、難民は自立して生活することができる―。アリがそれをまさに証明しています。
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