昨年の暮れ、ギリシャ・レスボス島の難民受け入れ施設でのこと。戦火を逃れて避難生活を送っていた人々が荷物を抱え、ギリシャ本土に移動するために列をなしていました。
彼らが向かうのは、ギリシャ北部ヴォルヴィ湖のそば。かつてはリゾート地として知られた場所で、紛争によりふるさとを逃れてきた人たちの避難場所として、ギリシャ政府が提供することになりました。
港行きのバスの中で「次の場所では、生活が改善されることを祈ります」と話すのは、情勢不安が続くシリア北西部のイドリブから家族とともに避難してきたモハメド(33)。この3カ月、人でごったがえしたレスボス島の施設で過ごしました。
「支援スタッフはとても親切にしてくれたのですが、日々の暮らしは簡単ではありませんでした」
モハメド一家がレスボス島にたどり着いた9月、収容人数2000人のシェルターには4倍近い人が押し込まれていました。軍事施設だった場所が解放されていましたが、スペースが足りず、多くの人は外の簡易テントで暮らしていました。辺りにはごみが散乱し、泥の水たまりだらけでした。
そんな状況で、寒さの厳しい冬を過ごすことは過酷です。
そこでUNHCRは、エーゲ海の島々に逃れた難民申請者が本土の避難先に移動できるようにギリシャ政府を支援。2018年9月以降、1万人以上が本土の受け入れ施設、ホテルやアパートなどに移動し、バスやフェリーでの移動はUNHCRが欧州委員会の資金援助を受けてサポートしています。
特に状況が深刻なレスボス島とサモス島では緊急体制が敷かれ、レスボス島では12月だけで1700人以上が移動しました。
モハメドは自分たちはわずか90日で、本土に移動できて“ラッキーだ”と話しします。
「私たちにとっては、1分1秒が貴重なんです」
シリアでは娘を銃弾によって失い、いまだ心に傷を抱えているモハメド。彼らは今、前を向いて歩き始めています。
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