ケニアのカクマ難民キャンプにある仕立て屋さん。常連客の一人、南スーダンから逃れてきたマリーはワインレッドのドレスを手に取って、試着室に入って行きました。
「ここで仕立ててもらうと、必ず自分の思った通りになるの」
たった2日でこの美しいドレスを仕立てたのは、コンゴ民主共和国から逃れてきたホタ(35)。2人の子どもの母親です。
カクマ難民キャンプ内では評判の仕立て屋のオーナを務めるホタ。実は脊柱に疾患があり、年齢のわりに背中が大きく曲がっています。体は思うように動かず、歩くのも一苦労です。
発症したのは小学校3年生の時。病状は日々悪化していき、毎日の通学も困難になってきました。6年生になったころには、学校にまったく行くことができなくなりました。
「学校に行けなくなって、本当に悲しかった」
でもホタは、泣いてばかりいませんでした。彼女の力となったのが、一本の針と裁縫のスキル。「これで生きていこう」。そう決心したのです。
2012年には紛争を逃れてコンゴ民主共和国からケニアに避難し、新たな場所で洋服の裁縫師の仕事を手に入れました。7カ月間、無我夢中で働いてお金を貯め、自分用のミシンを買いました。
3年たったころには、UNHCRとパートナー団体「Action Africa Help International」の支援を受けて、ミシンや布を購入するために1000米ドルのローンを組むことができました。今あるのは7台のミシン、7人の裁縫師を雇って、彼らへのトレーニングも自分で行っています。
「大変なこともあるけれど、子どもたちには私しかいないから頑張らないと」
毎日地道に働きながら、ローンを返済しています。
お客さんの多くは難民ですが、口コミで評判がどんどん広がり、最近では、現地のケニア人、カクマで働く人道支援団体のスタッフにも人気のお店になっています。
UNHCRはパートナー団体と連携し、ホタのように障がいのある難民が避難先でも安全に、そして尊厳をもって生きることができるような支援を進めています。
ホタの活躍は、世界中の障がいのある難民たちを勇気付けているはずです。
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