「私たちが歩いてきたのは、“レッドカーペット”ではない。いばらの道なんだ。外で寝たり、厳しい気候の中で長く歩くのもひと苦労だ」とアントニオ(68)は話します。中米のホンジュラスで仕事帰りにギャングの襲撃を受けて甥を亡くし、最低限の荷物をまとめて国を出ました。
アントニオは約4700人から成る“キャラバン”に加わった一人です。26日間かけてメキシコシティに到着した彼らには、避難先として、郊外のスタジアムが開放されました。大きな白いテントが3つ設置され、疲れきった身体を休めています。
10月半ば、暴力や飢餓から逃れるため、そして、職を求めて、ホンジュラス北西部のサンペドロスーラから500人が出発。グアテマラを越えメキシコへ北上する途中でさらに多くの人がキャラバンに加わり、一時は7000人を超える集団になりました。
メキシコシティまでの1600kmの道のりを、灼熱の太陽の下、何日もかけて進んできたのです。
ミッツィーの1歳の娘は道中、脱水症状に陥り、2回入院しました。ホンジュラスのギャングに14歳の娘をガールフレンドにしたい、拒否すると殺すと脅され、夫と3人の子どもと避難してきました。夫のミゲルも、ギャングから高額な税金の支払いを要求され脅迫を受けていました。
「既存の難民保護制度やシェルターの数では、対応できない規模の人が逃れてきています。私たちも対応能力を上げなければなりません」とUNHCRメキシコ事務所代表は話します。
UNHCRの支援を受けて、メキシコ政府は3264件の庇護申請者を登録。UNHCRとパートナー団体は専門家を含めスタッフの数を倍増し、メキシコシティで難民申請を考えている人々に法的なアドバイスを提供しています。また、自治体や消防と連携し、シェルターの数を増やしたり、家族や孤児、LGBTIなど特有のリスクに直面する人の保護にも取り組んでいます。
トランスジェンダーのリリはホンジュラスで身の危険を感じ、一人でキャラバンに参加しました。「メキシコでは差別を感じず、自由に生きていけるような気がします」。スタジアムで生活しながら、庇護申請をしようと考えているところです。
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※難民保護の観点から仮名を使用しています。