オランダ最大の都市アムステルダムで、とあるホテルでの1日。フロントで働くワシム(28)が客室の重いドアを開けると、そこには質素なベッドが2つ並んでいました。
その部屋は、どこか刑務所のようー。そう感じたなら、その理由は明らかです。なぜなら、まさにここは、かつての“悪名高き”刑務所だから。
2016年に閉鎖されたベイルマーバーエス刑務所が、オランダのNGOムーブメント・オン・ザ・グラウンドにより、期間限定のホテルとして改装されたのです。そしてスタッフとして雇用されたのが、50人を超える難民でした。
「このホテルで働き始めて、接客のノウハウを磨くことができました」と話すのは、フロント担当のワシム。NGO代表のニーナは、「お客さんは最初、“刑務所に泊まってみたい”という好奇心で訪れます。でも実際来てみると、難民のスタッフとの間でさまざまな文化の交流が起きています」といいます。
ホテル自体は、一時的なプロジェクトだったため先日閉業。しかし敷地内のレストランは営業を継続し、難民との交流が受け継がれています。
フロアマネージャーのヘイダー(30)は、イラクの首都バグダッドから逃れてきた2015年当時、なかなか仕事を見つけることができませんでした。しかし、昨年春からこのレストランでバリスタとして修行を積み、数ヵ月後、正規雇用のポストをつかみとることができました。
「実はイラクで自分のカフェを経営していたのですが、オランダに来てから、接客の部部分でまだまだ学ぶことがたくさんあることに気づきました。自分で生計を立てることができてうれしい」と胸を張ります。
「お客さんは、私たちが難民だと知って、会いに来てくれたり、食事をしに来てくれたりします。私が難民であっても、みんなと変わらない一人の人間であることを理解してくれます」。
今や1週間のうち、半分以上は予約でいっぱいになる人気レストランに成長。多くの難民の人たちの生活を支え、彼らの輝かしい未来への道を切り開く場となっています。
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