6月20日は「世界難民の日」です。世界がひとつになり、難民、受け入れコミュニティとの連帯を確認する日です。
紛争が勃発し、繰り返され、止むことなく激化していくなかで、世界各地で6850 万人もの人が住まいを追われています。そしてその9割は、国内の別の地域に、隣国に逃れており、難民自身はもちろん、受け入れコミュニティへの影響は計り知れないものになっています。
難民支援はかつてないほどに、世界規模で立ち向かうべき課題になっています。私たちすべてが、その責任を分かち合っていかなければならず、これまでとは違うやり方で対応すべき時期にきているのです。
現在、試行中の新しい支援モデルは、公平性、正義、人道的な価値や基準を重視したもので、良い成果につながっています。国、コミュニティレベルで、より計画的に、長期的に支援を行っていくことが求められ、それこそが、ふるさとを追われた家族を助ける仕事を担うということなのです。
難民たちは、避難先の地域に統合し、自身の可能性を生かすことができる場を持つ権利があります。そして私たちは、しかるべき時がきたら、難民がふるさとに帰還することができるよう、もしくは、第三国で新たに生活を始めることができるような支援のあり方も見出していかなければなりません。今年9月に採択される「難民に関するグローバル・コンパクト」は、そういった支援に向けた解決策の実現を目的としています。
法律や政策の整備も必要不可欠ですが、実際に難民が逃れてきたとき、その最前線で対応するのは、地元の人たち、コミュニティあることを忘れてはなりません。拒絶するのか統合に導くのか、絶望するのか希望につなげるのか、取り残されるのか未来を築いてくのか、それらは天と地ほどの違いです。みんなが一丸となり、コミュニティが難民を温かく迎えることができるよう支援すべきであり、責任を分かち合うことからすべては始まるのです。
レバノンのベイルート、バングラデシュのコックスバザール、ウガンダのユンベ、ドイツのフランクフルト、ペルーのリマなど、世界中の数え切れないほどの村、町、都市で、私たちは日々このような場面に遭遇しています。地域組織、宗教団体、教員、ビジネス、地方のリーダーなどさまざまな立場から、男性、女性、子どもたちが思いやりと連帯感をもって、現状を変えようと奮闘しています。
受け入れコミュニティは、僻地の国境地帯にあり、自身ですら生活物資がほとんどない貧困状態にあることもめずらしくありません。しかし、本当に驚くべきほどに、難民が逃れてきたとき、彼らは思いやりと尊厳をもって温かく接してくれています。こういった人たちが共に活動することで、生まれるパワーに勝るものはありません。
いま、難民支援の現場での英雄は誰でしょうか。地域統合がなにを意味するのかを理解している人、つまり、難民の地域統合を手助けできる人ではないでしょうか。地元の教会やモスク、学校、スポーツチーム、共同組合、若者グループなどの一員として、難民に直接支援の手を差し伸べ、共に行動している人たちではないでしょうか。また、地域統合の意味を理解し、努力している難民自身もそうでしょう。すべての人の思いやりの心が、難民の可能性に光をもたらし、支援の輪を広げているのです。
難民の生活再建に向けた支援は、私たちすべてが担うべき役割です。共に団結して行動することで、教育、住居、仕事、地域統合など、本来人間が持つべきものを難民は得ることができるはずです。そしていつしか、難民の家族にとって、彼らを受け入れる人々にとって、それは大きな影響をもたらすでしょう。
「世界難民の日」は一人ひとりが思いやりをもち、行動を起こすことを確認する日です。学校や近隣、職場で難民を受け入れ、支援できるよう行動することは、自身にとっても、ほかの人たちにとっても挑戦です。今日この日を、地球上のすべての人たちが連帯を強めるスタートにしましょう。
▶グランディ国連難民高等弁務官のメッセージ原文はこちら(英語)