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2017年6月20日(火)の「世界難民の日」に、国連大学のウ・タント国際会議場でUNHCR / ジャパン・プラットフォーム(JPF)共催シンポジウム『アレッポからニューヨーク、そして東京へ : 共に生きるために』が開催されました。
まず有馬利男JPF共同代表理事/グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン代表理事が開会の挨拶を行い、続いて逢沢一郎衆議院議員、UNHCR議員連盟会長が来賓として登壇し、挨拶しました。
JPF 有馬利男共同代表理事
逢沢一郎衆議院議員
シンポジウムの第1部では出川展恒 日本放送協会(NHK)解説委員がモデレーターを務め、世界の難民移民事情について、ダーク・ヘベカー UNHCR駐日代表、清谷典子 国際移住機関(IOM)プログラム・マネージャー、柳竜也 国際協力機構(JICA)中東・欧州部企画役がそれぞれの機関の役割について説明しました。続いて、世界が直面している難民・移民の問題について日本はどう向き合っていくかをテーマに登壇者とのディスカッションが行われ、ヘベカーUNHCR駐日代表は、受け入れ国での差別・偏見をなくすためにはメディアの役割だけでなく、草の根のイニシアチブが重要であると訴え、UNHCRによる「#難民とともに」の署名キャンペーンや、国連の 「#Together」キャンペーンへの協力を呼びかけました。
NHK 出川展恒解説委員
UNHCR ダーク・ヘベカー駐日代表
移民の受け入れ社会への貢献について、清谷 IOMプログラム・マネージャーは、移民は多様性のある社会づくりに貢献しているだけでなく、労働・納税によって経済的にも社会に貢献していると発言しました。重荷としてとらえられがちな状況を変えていくにはそういった移民の貢献や、一人ひとりの人権や尊厳を知ってもらう、そして、知る努力が必要とし、そのための取り組みとして移民一人ひとりの声を聞く「i am a migrant」キャンペーンについて触れました。柳 JICA中東・欧州部企画役はシリア難民支援の現場で感じたこととして、辛抱強い難民が少しでも快適に過ごせるよう、UNHCRや国際NGOと協力していきたいと語ったほか、ホストコミュニティ支援を通じた難民支援も大切であると述べました。
IOM 清谷典子プログラム・マネージャー
JICA中東・欧州部 柳竜也企画役
第2部では石川えり 難民支援協会(JAR)代表理事がモデレーターを務め、日本における難民支援の現場について発表とディスカッションを行いました。中古製品のリユースとリサイクル事業を行う株式会社リサイクルリンクの牛尾徹也販売課長は、JARが手がける難民と企業のマッチングにより2011年から難民の雇用を開始し、現在では組織に欠かすことのできない人材に成長していると語りました。受け入れ側としての大きな変化は、難民を特別扱いしなくなったということです。
JAR 石川えり代表理事
株式会社リサイクルリンク 牛尾徹也販売課長
渡部清花 WELgee(ウェルジー)代表は難民が日本社会と関わるための支援として難民ホームステイの活動を紹介し、ホームステイまでいかなくとも、生活者として困っている外国人にゴミの出し方を教えるなど、身近なところで市民ができることは多くあると語りました。折居徳正 JAR難民受け入れプログラム・マネージャーは、2016年に始動した民間主導のシリア難民の呼び寄せプログラムについて紹介した。ある日本語学校から授業料免除で受け入れが可能との声があり、留学生としての受け入れのきっかけとなったということです。今後の課題として、生活とキャリア形成支援のために、市民社会や行政等によるネットワークの強化・拡大が必要と訴えました。
WELgee(ウェルジー) 渡部清花代表
JAR 折居徳正難民受け入れプログラム・マネージャー
第3部では小美野剛 CWS Japan事務局長がモデレーターを務め、多様性のある社会を目指して私たちができることについて、登壇者がそれぞれ発表し、ディスカッションを行いました。ピーター・クリステンセン カナダ大使館参事官(イミグレーション)は、カナダでは難民への態度がポジティブな理由として、移民の歴史があることと充実した社会統合政策を挙げた。また、民間主導による難民受け入れの取り組みを海外にも広めるためのイニシアティブ(GRSI)についても触れました。
CWS Japan 小美野剛事務局長
カナダ大使館 ピーター・クリステンセン参事官(イミグレーション)
田中徳雲 同慶寺(福島県南相馬市)住職は原発事故により移住を余儀なくされてから始めたお寺と地域の方々へのケア活動について語りました。仏教徒としての立場から、自他を区別する心が様々な問題を生み出す要因となること、地球を1つの生命と考えて地球をケアすることが大切だと訴えました。ソロアーティスト/ギタリストのMIYAVIは、2015年にレバノンのベッカー高原を初めて訪れた際、自分は難民に対して何ができるか心配だったが、音楽で国境・人種を飛び越え一つになれることを実感し、自分にもできることがあると気づいたと語りました。様々な分野の人が、それぞれのやり方で難民を支援することが大事と訴えました。
同慶寺 田中徳雲住職
ソロアーティスト/ギタリスト MIYAVI
質疑応答では参加者から「日本でのシリア人留学生の就職先はどのようなことが考えられるか」、「差別や偏見をなくしていくにはどうしたらいいか」、「寄付以外にできる支援について知りたい」などの質問が寄せられ、登壇者がそれぞれの立場から答えました。また、会場からは緒方貞子 第8代国連難民高等弁務官が発言し、海外での塩水に関わるプロジェクトが東北における稲作りに役立った例を挙げ、海外への支援例が日本にも生き、その逆もあると語った。
最後にヘベカーUNHCR駐日代表が閉会の挨拶を行い、今回のシンポジウムのタイトル『アレッポからニューヨーク、そして東京へ : 共に生きるために』にある通り、グローバルな話題を東京につなげることができたと語りました。また、市民社会への役割やステークホルダーへの働きかけの重要性に触れ、すぐにでも寄付やボランティア、隣人の外国人に日本語を教えるなどの行動に移してほしいと呼びかけ、シンポジウムを締めくくりました。
UNHCR ヘベカー駐日代表
写真:©UNHCR