レバノンの海岸でサーフィンを楽しむシリア難民のアリ(16)は、数年前まで泳ぐことすらできませんでした。アリは、2011年にシリアのアレッポからレバノンへ家族と共に逃れ、レバノンの首都から南方28kmに位置するジエという港町で避難生活を送っています。この地域にはレバノンのサーファーが多く集まります。そこで初めてサーフィンをする人々を見たアリは、一瞬にして心を奪われました。
その日から、アリはビーチでサーファーたちのテクニックを観察し、発泡スチロールで作ったボードで波に乗る練習を始めました。まだ水が冷たい4月、そんな姿をたまたま目撃したサーフコーチのエル・アミンは、無理やり波に乗ろうとするアリを止めようとしました。それでも泳ごうとするアリを海から引き戻したアミンは、アリにサーフボードとウェットスーツを与え、サーフィンを一から教えました。
「サーフィンをしていると、すべてを忘れることができます。何か考えことをしていても、海に入った瞬間忘れてしまうんです」と語るアリ。5年前にアレッポでの爆撃で兄を失いましたが、サーフィンを通じて過去ではなく現在に意識を向けることができています。
人口400万のレバノンは、100万人以上の難民を受け入れてます。難民をサポートするシステムは崩壊寸前で、多くの難民が、医療や教育、住居支援を受けることができていません。アリの父親は、子どもたちを養うだけの仕事が見つからず、アリは学校を休学しています。今は、サーフショップで復学するためのお金を稼ぎ、夏からまた学校へ戻る予定です。アリの将来の夢は、サーフィンの世界大会へ出場し、良い波を求めて世界中を旅することです。シリア紛争が終わり、シリアでサーフィン学校を開くことを夢みて、今日も海へと向かいます。
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