2013年44ヶ国の先進国において難民申請件数が急増したことが明らかになった。主な要因としてはシリアの人道危機があげられる。
UNHCRがとりまとめた「先進国における庇護申請の現状と動向−2013」によると、昨年北米、欧州、東アジアと太平洋地域で難民申請を行った人の数は61万2700人であった。これは2001年以降最多である。過去2年間、庇護申請者の出身国1位だったアフガニスタンは、シリアとロシア出身者の申請者が増加したため第3位になった。難民出身国の上位10ヶ国のうち6ヶ国(シリア、アフガニスタン、エリトリア、ソマリア、イラク、パキスタン)で暴力行為や紛争が続いている。
アントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官は「シリア危機がシリア周辺国のみならず、広範囲にわたり影響を与えていることはこの統計の変化をみれば明白である。難民と難民を受け入れるコミュニティ支援にこれまで以上に比重が置かれるべきである。」
2013年の難民申請者数を地域別に見ると、最も急増した地域は欧州38ヶ国であり合計48万4600件の申請があった。欧州の国別で見ると、ドイツは新たに10万9600件の難民申請があった。次いでフランスでは6万100件、スウェーデンでは5万4300件の難民申請があった。シリア危機を受け、トルコは欧州の中で最も多くの難民を受け入れている国であるが、2013年の申請数は4万4800件であった。出身国は主にイラクとアフガニスタンである。(トルコで難民登録されたシリア難民の数は3月18日時点で64万889人にのぼる)
イタリアでは2万7800件、ギリシャでは8200件の難民申請が行われた。
地域別で欧州に次ぐのは北米であり、合計9万8800件の難民申請があった。北米で難民申請をする人の多くは中国出身である。カナダでは難民受け入れに関する政策変更を受け、難民申請件数は1万400件に減少した。(これは2012の申請件数の半分である。)8万8400件の申請が行われたアメリカ合衆国は先進国の中でも多くの難民を受け入れてきた国であり、申請件数だけで比べるとドイツに次いで2番目に多い。
東アジアと太平洋地域を見ると、近年の統計と比較して日本(3300件)と韓国(1600件)での申請数が増加した。2万4300件の申請を受けた豪州も2012年(1万5800件)と比較すると申請件数が増加した。これはイタリアでの申請件数と並ぶ規模である。
先進諸国に避難した庇護申請者は、難民認定を受ける資格を有するかどうか個別の調査を受ける。この過程を経て、結果的に庇護申請者数は難民認定された人の数を上回ることになる。
「先進諸国への庇護申請者数のレポート」で対象となっている先進国44ヶ国では、難民認定率は国によって開きがあるが、紛争によって避難した難民の認定率が高い傾向にある。例えばシリア、エリトリア、イラク、ソマリア、アフガニスタン出身の難民認定率は62%から95%である。ロシアやセルビア出身(国連決議1244によって国連の暫定統治下に位置付けられたコソボも合わせ)の難民認定率は特に低く、ロシアは28%とセルビアは5%であった。
UNHCRは強制的に移動をさせられた人々の数を世界規模で把握し、毎年レポートとして発表している。強制移動の形態として主なものは、国内避難民、他国へと逃れる難民、庇護申請者である。(2013年、この3つの形態すべてを合わせた人の数は4520万人であった。)UNHCRが毎年発表しているグローバル・トレンド・レポートは今年6月に発表予定である。
「先進国における庇護申請の現状と動向−2013」のレポート全文はこちら(英語)
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