アントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官は、地中海での船の転覆事故で多くの人が亡くなったことに大きな衝撃を受けていると語った。マルタ政府によると700人いた乗客のうち、救助されたのは50人であった。もしこの数が正確であれば、これまで地中海で起きた難民、移民の移動に伴う事故の中でも最も深刻な惨劇であったといえる。
今回の事故の直前、4月14日にも地中海で400人が命を落としたニュースが伝えられた。また2013年10月にはランペドゥーサ島沖での事故で600人が亡くなった。
今回の事故は、4月18日夜12時少し前にランペドゥーサ島から約180キロほど南のリビアの海域で起きた。イタリアとマルタの海軍船と漁船など合わせて20隻とヘリコプターがイタリア政府指揮の下、救助活動をおこなった。UNHCRは救助された人が現在どこに搬送されたか確認中である。
グテーレス高等弁務官は「今回の事故は、海上での救助活動のあり方を見直すと同時に、欧州を目指す人々が安全に渡航するための法整備が急務であることを物語っている。この2点が改善されなければ、庇護を求めて海路で避難する人々の悲劇は終わらないだろう。これに加え、欧州諸国が一体となり問題の根本原因を解決するための包括的な施策が重要である。特にEUが大きな役割を担っていることを自覚し、臨機応変に対応することを期待している」と訴えた。
UNHCRは、命を危険にさらしてまでも多くの人が海を渡って避難する現状を打破する緊急対応策をEUが見出すよう提言している。 具体的には海上での徹底した捜索と救助活動や、第三国定住や人道的配慮に基づく滞在許可、家族再統合といった法整備を含めた提案をEUに行ってきた。
2015年はこれまでに3万5000人以上の難民、移民が庇護を求めて欧州南部に辿りついたが、避難の途中に海上で命を落とした人の数は1600人に上る。2014年は21万9000人が地中海を渡ったが、 3500人がその過程で亡くなった。
詳しくはこちら(英語)
プレスリリースはこちら(PDF)