ジュネーブ発
2016年1月1日、これまで10年以上UNHCRを率いてきたアントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官に代わり、新たにフィリッポ・グランディ(Filippo Grandi)が高等弁務官に就任した。グランディ高等弁務官はこれまで中東、アフリカ、アジアといった国々で難民や国際問題に関連する職務を経験してきた。高等弁務官としての任期は5年である。
グランディ高等弁務官は1月4日にUNHCRジュネーブ本部に着任した。 世界中で紛争や迫害を逃れる難民、避難民がかつてない規模で増え続け、欧州での難民、移民をめぐる危機が高まる中での厳しい船出となった。人道支援活動の為の資金不足、避難した国に留まる難民が増加し、自主的帰還者数が過去30年で最も少なくなるなど課題は多い。
グランディ高等弁務官は「UNHCRは大変難しい舵取りを迫られている。複数の紛争が同時に起きた結果、多くの人々が避難を余儀なくされてきた。庇護を求めて逃れた人々をどのように保護するか、人道支援のニーズに反して不足する予算、排他的思想の高まりなど、課題は山積みであり、世界は危機的状況に直面している。しかし、難民や国内避難民、無国籍者の国際的保護と生活状況改善のために、今後も各国政府や市民社会、パートナーなどと協働して行きたい」と話した。
更にこの危機的状況への解決策として「問題を根本的に解決するという確固たる姿勢、政治的なアプローチと、資源への的確な投資が重要である。UNHCRのマンデート(委任権限)には、問題の解決策を見出し、そのために活動することも含まれている」と語った。
グランディ高等弁務官はイタリア出身で現在58歳。これまで30年以上にわたり国際問題に関わる職務をこなしており、そのうち27年は国連機関で勤務した経歴を持っている。前職はUNRWA (国連パレスチナ難民救済事業機関)のトップである事務局長であり、その前はUNAMA(国連アフガニスタン支援ミッション)の特別代表代行を務めた。それ以前にはNGOやUNHCRのアフリカ、アジア、中東、ジューネーブ本部などでの職務経験があり、緒方貞子 第8代国連難民高等弁務官の特別補佐官を、後に官房長も務めた。
UNHCRは世界中の難民、国内避難民、無国籍者の保護と支援、また問題解決に向けて取り組んでいる。現在、UNHCRは126ヶ国で活動しており、スタッフの数は約9700人である。紛争地の近くで活動しているスタッフも多い。家を追われた人の数は第二次世界大戦以降最多となる5950万人に上っており(2015年6月発表)、その数は増え続けている。また、2015年は地中海を渡って欧州へと逃れる難民、移民の数が100万人を超えた。
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