ジュネーブ(1月18日)発、
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、世界各地のパートナーと協力して、難民問題の解決へ向けた取組みを進めている。多くの経験と知識を携える企業は、重要なパートナーである。日本の大手アパレル企業、、ユニクロとのパートナーシップもその好例だ。2006年から協力関係にあるUNHCRとユニクロによるユニークな取り組みとは、店頭で回収したユニクロ商品を難民キャンプに寄贈することから始まった。着なくなった商品を店頭で顧客から預かると、難民たちの文化的背景やニーズに合わせて仕分けし、各地に送り届けている。さらに、これまでに数々の著名人が難民に対してのメッセージを込めたチャリティTシャツのデザインを手がけている。今年はローラ・アシュレイとのコラボレーションが予定されている。UNHCRとユニクロは連携体制を一層強めるため、2011年にグローバル・パートナーシップを締結した。このたび、UNHCR本部のセシル・ポーリー資金調達官がユニクロを傘下に、ファーストリテイリングのCSR(企業の社会的責任)を統括する新田幸弘 グループ執行役員とジュネーブで意見を交わした。
UNHCR: UNHCRとユニクロの間で締結されたパートナーシップについて教えてください。
新田氏: 現在までUNHCRの協力のもと、私たちは難民へ服を届けてきました。今後はインターンシップや寄付、チャリティープログラムなどといった他の分野での協力関係も拡大、強化していきたい思っています。
UNHCR: このパートナーシップを結ぶきっかけとなったことは?
新田氏: ユニクロはカジュアルな服を生産し、世界中の人に届けることを目標としています。一年に6億着の商品を生産・販売する中で、着なくなった服も出てきます。私たちはそのような服を2006年に回収しはじめたのですが、90%がまだ綺麗な状態でした。衣類配布に協力してくれるパートナーを探したところ、UNHCR駐日事務所が好意的に引き受けてくれました。難民キャンプでは、水、食べ物、医療の支援は行き届いているもの、衣類の供給が不足しているのが現状なのです。
UNHCR: 全商品リサイクル活動の試みはどの程度成功していますか?
新田氏: 現在まで私たちは500万着以上の衣服を難民へ届けました。2012年には1000万着に達する見込みで、5年以内には4300万着を回収し、世界中の難民一人ひとりにを衣類を届けたいと考えています。
フリースジャケットとトレーナーは洗濯が簡単で乾くのも早いという点で特に人気があります。
UNHCR: ユニクロが取り組む難民向けの新たなインターンシップ・プログラムについて教えて下さい。
新田氏: 日本で大学に通う難民がユニクロの店舗で、2週間インターンシップを経験することができます。このプログラムは年間50人まで受入枠を拡大し、世界中のユニクロ店舗でも実施していきたいと思っています。このプログラムの初年、ベトナム人1人と、ミャンマー人3人の計4人をインターンとして受け入れ、ユニクロ店舗でビジネス、管理、そしてチームワークを学ぶという貴重な経験をしてもらいました。彼らは現役の学生ですが、うち2人はパートタイム従業員としてユニクロで働いています。
UNHCR: ユニクロのスタッフ間で難民への意識拡大についてはいかがですか?
新田氏: UNHCRが運営し、以前ユニクロが衣類を配布したことのあるネパールの難民キャンプに、2人の社員を派遣しました。ユニクロの衣類がどのように役立っているのかを現場で理解することはもちろんですが、可能であれば、そこで学んだことがユニクロのソーシャルビジネスに活用できればと考えています。私たちはバングラデシュでソーシャルビジネスを実施しています。つまり、最も貧しい人たちに対して安く製品を製造、販売しているのです。私は、難民もこのような最貧層の人たち同様、とても厳しい状況にあり、この経験を活かし、ユニクロのソーシャルビジネスを促進していきたいと考えています。従業員の多くも難民キャンプ派遣に興味を持っていますし、将来的にはより多くの社員を派遣することができればと思います。
UNHCR: 2011年10月にユニクロはソマリア人道危機に対してUNHCRに200万米ドルを寄付しました。
新田氏:ソマリアの状況と、該当地域が50年間で最悪の飢饉にあるというニュースを沢山耳にし、社長の柳井はこの状況を大変憂慮していました。もちろん衣類の支援も重要なのですが、このような状況では資金面での援助の方がより効果的だと考えました。
UNHCR: 他に協力できる可能性がある分野はあると思いますか?
新田氏: UNHCRのジュネーブ本部との話し合いにおいて、UPSやIKEAと協同できる可能性について議論しました。またそのような国際団体、NGOそして他企業との共同作業は、私達にとって新たな関係を築き、難民へより多くの支援を行なうために大変重要なことです。
UNHCR: 日本人の多くは難民問題を意識していると思いますか?
新田氏: いいえ、あまり知られていないと思います。しかし2006年にユニクロが活動を始めて以来、より多くの人に対して難民問題を知る機会を提供できたのではないかと思います。昨年は400万着の商品を回収しました。仮に顧客一人当たり10着持ち寄ってきたと想定すれば、40万人の顧客が理解を示したことになります。結果として人々の関心は高まっています。私たちはウェブサイトやパンフレットなどを通して難民への意識を高める啓発活動にも力を入れています。
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