5年にも及ぶ残酷で無意味なこの紛争によって、25万人以上のシリア国民が殺害され、人口の半数以上が恐怖と欠乏のため避難生活を余儀なくされています。特に460万人もの人々が、そこからほとんど逃れることの出来ない、そして援助も届かないような場所で生死の境ともいえる状況におかれています。さらに480万人もの人々が祖国を離れました。今日のシリアは、場所によってはかつての姿が変わり果て、その再建は何世代にもわたることとなるでしょう。
他方、過去数週間にかけて、深刻な状況の好転につながるかもしれないという兆し、あるいは壊れやすくともかすかな希望の光が見えるようになってきました。投下される爆弾の数が減少し、いくつかの場所で人道アクセスが拡大し、すべての交渉当事者が集まって対話するための準備を進めています。人道支援活動に携わる者として、実際の状況変化につながるこうした進展を歓迎します。
国連、非政府組織(NGO)、そして他のパートナー機関は、長きに渡りいかなる支援を受け取ることも出来なかった人々に支援を届けるべく新たな機会をつかみました。危険と不確実性にもかかわらず、私たちは支援を届けるための新しい方法を試み、またそのための交渉にも継続的に取り組んでいます。2016年初め以来、通常の支援、そして先日実現した、包囲されている街への物資搬入を通じて、600万人以上の人々に何とか支援を届けることが出来ました。
しかし私たちは、この紛争のすべての戦闘当事者が一般市民や学校、市場、そして病院に対する攻撃を止めるまで、彼らが義務を果さなければならないことを訴え、またその暴力行為に対して法的責任を負うことを求め続けます。またチェックポイントで、医療物資や機器がいまだに取り除かれていることは到底受け入れられません。
支援を必要としているすべての人々のために、安全で妨げられることのないアクセスを戦闘当事者が十分保障するまで、私たちはそれがどんなに困難であろうとも、ありとあらゆる手段を通じて、一般市民に支援が届くよう取り組みます。実際現在では、包囲された地域でより多くの人々に支援が届けられるようになったのです。しかし、緊急援助と保護を必要としているにもかかわらず、包囲地域に住むシリア人の実に5人に1人にあたる人々に近づくことがまだ出来ていません。
また何ヶ月以上も遮断されてきた地域に基本的な支援物資を届けられるようになってきたものの、十分ではありません。例えば、50万人もの人々が戦闘の前線に晒されているホムス郊外北部やアレッポ市街の状況を極めて憂慮しています。またIS支配地域には200万人もの人々が暮らしています。
私たちはパートナー機関とともにこうした地域に対しても支援を届ける用意があります。国連は、これまでアクセス出来なかった包囲地域を含め、人道支援活動が困難となっている地域での支援を実現するため、すべての戦闘当事者とアクセスの交渉を粘り強く続けます。
3月15日から紛争が6年目を迎えるのを目にしたい人はいないでしょう。シリアで暮らす若者たちが希望を持って祖国の将来を築いていけるように。教育と保健医療サービス、住まいや仕事を得られるように。そして人生には恐怖と暴力と空腹以上の意味がある、そう信じられるようにしなければなりません。
シリア国内および国際的なすべての当事者に対して、シリア紛争が5周年で最後となるよう、そして政治的対話が真の平和とシリアの災禍に終わりをもたらすよう、私たちは声を合わせ強く求めます。
署名者
スティーブン・オブライアン 国連事務次長(人道問題) 兼 緊急援助調整官
アーサリン・カズン WFP 国連世界食糧計画(国連WFP)事務局長
アンソニー・レイク 国連児童基金(UNICEF)事務局長
フィリッポ・グランディ 国連難民高等弁務官(UNHCR)
マーガレット・チャン 世界保健機関(WHO)事務局長
ウィリアム・レイシー=スウィング 国際移住機関(IOM)事務局長
ピエール・クレヘンビュール
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)事務局長
ヘレン・クラーク 国連開発計画(UNDP)総裁
サミュエル・ウォーシントン
インターアクション(InterAction)チーフ・エグゼクティブ・オフィサー
レイラ・ゼルギー 国連事務総長特別代表(子どもと武力紛争)
ザイナブ・ハワ・バングーラ 国連事務総長特別代表(紛争下の性的暴力)
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